
サッカー日本代表 堂安律【写真:Getty Images】
またしても叶わなかった決勝トーナメントでの勝利。敗戦を誰よりも重く受け止めていたのは堂安律だった。攻守両面でチームを支え続けた背番号「10」は、試合後、自らに厳しい言葉を投げかけた。そこには、日本代表を勝たせたいという強い責任感がにじんでいた。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
「そっちに自信が…」

ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールと対峙するサッカー日本代表 堂安律【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)優勝という大きな目標を掲げていた日本代表。彼らにとって、29日のラウンド32で対峙するブラジル代表は絶対に倒さなければいけない宿敵だった。
森保一監督も「これまで勝率0%だったところが、我々にも勝つチャンスがあることが分かったのが、前回(2025年10月)の親善試合だった」と前日会見で言及。8か月前のゲームのように今回も王国を倒す気満々だった。
それは選手たちも同じ。エースナンバー「10」を背負う堂安律は25日のスウェーデン代表戦の後の3日間、メディア対応を回避して精神を集中。日本が過去4度のW杯で突破できなかった決勝トーナメント1回戦を越えるべく、自身の役割、チームとしての戦い方を整理した模様だ。
「今は強豪のすごいドリブラーと対峙しても、僕自身、守備のところでやられている気がしない。そっちに自信がついているところもあります」と本人も日に日に守りの意識や意欲が向上していることを明かしていた。
ブラジル戦では看板アタッカー、ヴィニシウス・ジュニオールを、3バック右に陣取る冨安健洋と連係しながら完封しなければならなかった。そこにも堂安はやりがいを感じていたはずだ。
「この大会はエゴを出す大会じゃない」

ブラジル代表から先制点を奪った日本代表 佐野海舟【写真:Getty Images】
もともと「自分が点を取ってやる」という野心に満ち溢れている男がここまで献身的に守備をする選手へと変貌したのは驚きに値する。それは日本代表を勝たせたいという気持ちの高まりから来る部分が大きいだろう。
グループリーグの間には「この大会はエゴを出す大会じゃない。それがしたいやつは大会が終わってからにしてくれって思いますし、それは全員が分かっていると思います」とも強調。“献身的な10番像”を自ら体現しつつ、自身2度目の大舞台に挑んでいたのだ。
迎えたヒューストンスタジアムでの大一番。キャプテン・板倉滉がベンチスタートになったことから、キャプテンマークを巻いた堂安は凄まじい闘争心を前面に押し出した。
日本は序盤からブラジルにチャンスを作られ、厳しいスタートを強いられたが、「前半のハイドレーションブレイクまでは0−0で行く」というプラン通りに試合を運ぶことができていた。
直後の29分には、佐野海舟が目の覚めるようなインターセプトからのドリブルで持ち上がって右足を一閃。豪快なミドルシュートをお見舞いし、1点をリードして折り返すことに成功したのだ。
これは8か月前のブラジル戦とは全く逆の構図。あの時は日本が0−2でビハインドを背負っていたが、後半に畳みかけ、堂安が“戦術カタール”と呼んでいる劇的逆転劇を見事に結実させた。だが、今回のようにリードしている方がより難しい。そのあたりは彼自身も警戒心を募らせて後半に入ったはずだ。
「明らかに変わったのは…」

ブラジル代表 カゼミーロが決めた同点ゴール【写真:Getty Images】
しかしながら、日本はブラジルの戦い方の変更に戸惑った。
「明らかに変わったのは、ヴィニシウスが中に入らず、サイドに張ってきたこと」と堂安は言うが、彼の位置のみならず、ボランチのカゼミーロも高い位置を取り始めるなど、あらゆる面で変化が生じた。ガブリエウ・マガリャンイスらセンターバック陣もクロスを次々と蹴り込んできたのだ。
そうなると、日本はどうしても引いて守らざるを得なくなる。守護神・鈴木彩艶を中心に耐え凌いでいたものの、56分にはカゼミーロが右奥のポケットに侵入し、そこからヘッド。早い時間に追いつかれてしまった。
日本としては、そこからもう一段階ギアを上げたかったが、堂安が疲弊しているように森保監督には映ったのだろう。66分に早々と交代を告げられてしまう。ここでピッチを去ることを背番号「10」は複雑な思いで受け入れたのではないか。
そこからはベンチで戦況を見ていたが、日本のギアはなかなか上がらない。交代選手たちもグッと流れを引き寄せられず、ブラジルの猛攻を受ける形になった