
ベガルタ仙台FW中島元彦【写真:藤江直人】
かつて大きく成長したクラブに、再び帰ってきた。セレッソ大阪からベガルタ仙台への完全移籍を決断した中島元彦は、仙台の地で新たな挑戦を始める。過去に積み重ねた実績があるからこそ、周囲から寄せられる期待も大きい。そのすべてを背負いながら、中島は何を思い、どのような覚悟で古巣への帰還を決めたのだろうか。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
「そのために自分も帰ってきたと思う」

ベガルタ仙台FW中島元彦【写真:藤江直人】
仙台はJ2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドのEAST-Aグループを16勝2敗の首位で通過した。快進撃の過程で黒星を喫したブラウブリッツ秋田、横浜FC戦をくしくも視聴していたと中島は明かした。
2025シーズン以降の仙台には、現時点で25歳の石井隼太と小林心、24歳の武田英寿と五十嵐聖己、22歳の中田有祐と杉山耀建、20歳の南創太と安野匠、19歳の古屋歩夢と中島より年下の選手たちが加入した。
中島は「すごく若くなりましたよね」と笑いながら、新シーズンへ向けて決意を新たにしている。
「仙台は徳島や大宮といったクラブを苦手としてきた意識があるので。百年構想リーグではそういった相手と戦っていなかったので、そういうクラブと自分が戦うときに活躍できたらいいな、と。
そのために自分も帰ってきたと思うし、リーグ戦が始まってどうなるかわからないですけど、初戦も藤枝で正直、あまり得意じゃないので、緩い空気を出さないようにやっていけたらいいなと思っています」
最終節でいわきFCに0-1で敗れ、勝ち点1差の7位でJ1昇格プレーオフ進出を逃した2025シーズンは徳島ヴォルティス、RB大宮アルディージャにホーム、アウェイともに黒星を喫している。
さらに中島が在籍した2023、24シーズンは藤枝MYFCに対して2分け2敗とひとつも勝てていない。槙野智章監督に率いられる藤枝とは8月8日の開幕戦で、敵地・藤枝総合運動公園サッカー場で激突する。
「自分の夢を追うよりも…」

トレーニングマッチに出場したベガルタ仙台FW中島元彦【写真:藤江直人】
セレッソサポーターを驚かせ、仙台のサポーターを歓喜させた今夏の移籍が決まるまでの経緯を、中島は「いろいろとありました。深くは言えないですけど」と決して多くを語ろうとしない。
それでも新加入選手記者会見で紡がれた言葉は、中島のなかで日を追うごとに力強く脈打っている。
「自分の夢を追うよりも、いろいろな人の夢を背負ってプレーしたいと思いましたし、一番やりがいのあるチームはどこだろうと思ったときに、ここを選びました。
いろいろなチームを見ましたけど、やはりここは一番熱いチームだと思います。このクラブでサッカー人生を最後までやりたい、という思いで頑張ります」
15日には福島・JヴィレッジでJ1の鹿島アントラーズとのトレーニングマッチに臨み、開幕へ向けたキャンプを打ち上げた。45分を3本行ったなかで、中島はシャドーとして2本目にフル出場している。
試合は1本目に2失点、3本目には3失点を喫し、攻めては無得点と0-5で敗れた。
「体がきつい部分もありましたけど、自分が出たときはボールの主導権も握れて、(鎌田)大夢とうまく中盤で時間を使いながらチャンスも作れていたので、手応え的にも悪くなかったと思っています」
鹿島との一戦をこう振り返った中島に、あらためて聞いてみた。いま現在の心境は「ただいま」なのか、それとも「よろしく」なのか。中島は「両方じゃないですか」とこう続けている。
「過去の自分があるからこそ…」

2024シーズン以来の復帰となった中島元彦【写真:Getty Images】
「年齢も変わってきたし、役割も変わっている部分もあるので。過去の自分があるからこそみなさんの理想も高いし、それを体現しないといけないのも自分なので、新しい気持ちで頑張れたらいいな、と」
一方で中島は仙台においてブランクを感じていない。キャプテンの菅田真啓や守護神の林彰洋、さらに松井蓮之、鎌田大夢、相良竜之介ら旧知のメンバーがそろう陣容だけが理由ではない。中島が言う。
「自分が中心なので変わらないですね」
短い言葉から伝わってくるのは、無理筋を承知のうえで荒木へ連絡を入れて、再びクラブのレジェンドナンバーを背負った決意と責任感。中島の視線は新シーズンだけでなく、その先へも向けられている。
「(J1へ)昇格するだけじゃなくて、定着して戦い続けられたらと思っています」
下部組織を含めて20年近く在籍したセレッソに、自らの意思で別れを告げて歩みはじめた新たな道。仙台に骨を埋める覚悟も胸中に抱きながら、中島は目前に迫る新たな戦いを心待ちにしている。
(取材・文:藤江直人)
【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
「もう変えられない」“取り返しのつかない行為”からの再出発。ベガルタ仙台、安野匠が貫く「変わらない部分」とは【コラム】
「本当に愛されキャラ」ベガルタ仙台、石井隼太が努力で掴んだ居場所。「悔しい思いをしたと思う」昨季からの軌跡【コラム】
「ヒデさんはおそらく…」ベガルタ仙台、五十嵐聖己の脳裏にあった閃き。「ありがとうございます、と」【コラム】
【了】
