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ブーイングどころか”浅倉廉コール”。ベガルタ仙台での第一歩を支えた古巣・藤枝MYFCの愛情「だからこそ成長した姿を…」【コラム】

浅倉廉 藤枝MYFC
今夏にベガルタ仙台へ加入した浅倉廉【写真:Getty Images】



 藤枝MYFCから今夏に加入したベガルタ仙台のMF浅倉廉が、古巣との開幕節でデビューを飾った。無意識に藤枝側へ駆け出しかけた”デジャブ”のハプニングを見せつつ、後半にゴールまであと一歩というシーンを披露。試合は0−2で敗れたが、割れんばかりの拍手と“浅倉コール”に包まれ、次節の仙台ホーム開幕戦へ闘志を燃やした。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]

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明治安田J2リーグ第1節
藤枝MYFC 2-0 ベガルタ仙台
藤枝総合運動公園サッカー場

開幕節で起きた“ハプニング”

浅倉廉 藤枝MYFC
藤枝MYFCでプレーしていた浅倉廉【写真:Getty Images】


 頭では理解していたはずだった。それでも、いざ、という瞬間に無意識のうちに体が動いていた。

 藤枝MYFCのホーム、藤枝総合運動公園サッカー場に乗り込んだ8日の明治安田J2リーグ開幕節。ベガルタ仙台が1点を追う後半開始を控えたピッチ上で、ちょっぴり微笑ましいハプニングがあった。

 ゴールと逆転勝利に絡む仕事を託され、FW梅木翼に代わって投入されたMF浅倉廉が、メインスタンドから見て左側となる藤枝側のピッチへ向かって勢いよく飛び出しかけたからだ。

 間違いに気がついて慌ててUターン。苦笑いを浮かべて仙台が作る円陣へ加わった浅倉が言う。

「仙台での一発目で、(ホームの選手として)仙台で試合をした経験がなかったので、何か癖で行っちゃいました」

 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)の真っ只中だった6月21日。浅倉はJFA・Jリーグ特別指定選だった2023シーズン後半を含めて約3年間プレーした藤枝から、J2・J3百年構想リーグで頂点に立ち、2021シーズンを最後に遠ざかっているJ1昇格を射程距離にとらえる仙台へ完全移籍で加入した。

 全国高校サッカー選手権大会を制した静岡学園高校から拓殖大学をへて加入した藤枝では、今年前半の百年構想リーグを含めて84試合に出場。12ゴールを決めて攻撃陣をけん引してきた。

 藤枝を「特別なクラブ」と位置づける浅倉は、移籍が決まった際に公式HP上でこう綴っている。

「藤枝を離れることへの葛藤もありました」

藤枝MYFC対ベガルタ仙台
藤枝MYFC対ベガルタ仙台の模様【写真:Getty Images】


「サポーターの皆さまからの期待を感じながら、共に戦い、これからもこのクラブとともに成長し、目標に向かって進んでいきたいという思いもありました。だからこそ、藤枝を離れることへの葛藤もありました」

 慣れ親しんだスタジアムとファン・サポーターにも、いまも深い愛着と感謝の思いを抱いている。だからこそ仙台でのデビューを果たす瞬間に状況を忘れ、頭のなかでいわゆるデジャブを起こしてしまった。

 もっとも、間違えて藤枝側へ向かった理由はそれだけではなかった。浅倉が再び苦笑する。

「トレーナーの方へ挨拶にいこうと思っていたのもあって、ちょっと勢いで行っちゃいました」

 敵陣のピッチ上にいた藤枝のトレーナーへひと言告げたい。律儀な思いも浅倉の思考回路を混乱させた。スタンドから拍手に混じって笑いも起こるなかで、浅倉は左シャドーで新たな戦いをスタートさせた。

 仙台への移籍が発表される直前に、秋春制へ移行する2026/27シーズンの開幕節と第2節のカードが発表されていた。アウェイで開幕を迎える仙台の相手として「藤枝MYFC」が記されていた。

 スタジアムなどは後日発表とされていたが、舞台が藤枝総合運動公園サッカー場なのは間違いない。覚悟を決めて加わった新天地での初陣で古巣と対戦する。移籍した浅倉の脳裏にこんな言葉が浮かんできた。

「だからこそ成長した姿を…」

横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ
MUFGスタジアムで行われた横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】


「早いな、とは思いましたね。でも、そう思ったくらいですけど」

 横浜F・マリノスと鹿島アントラーズがMUFGスタジアム(国立競技場)で対峙した7日のJ1開幕節。この夏に鹿島からマリノスへ完全移籍した知念慶が、キックオフ前のメンバー発表時に大音量のブーイングを浴びた。

 リーグ戦を戦っていく以上は、いつかは必ず古巣と対戦する。自分が8月8日の開幕戦でベンチ入りメンバーに名を連ねた場合も、鹿島側からブーイングを浴びた知念と同じ状況が藤枝の地で生まれるのか。

 こう問われた浅倉は「ないと思っていました」と、笑顔を浮かべながらこう続けた。

「藤枝のサポーターはすごく温かいので、こうして拍手で迎えてくれるのは何となくわかっていました。いざ拍手で温かく迎えられてすごくありがたいと思いましたし、だからこそ成長した姿を見せよう、と」

 スタンドをどよめかせたシーンは、依然として0-1とリードされていた59分に訪れた。

 自身の投入とともにシャドーから2トップの一角にポジションを変えていた中島元彦からパスを受けた浅倉が、得意の細かいステップを踏んだドリブルを駆使。藤枝ゴールに迫っていった直後だった。

 相手ゴールまで30メートルはあった地点から、浅倉は迷わずに右足を振り抜いた。

「負けていたので自分が点を取ってチームを勝たせたい、という思いでした。チャンスはあったんですけど、ああいうところで決め切らないとチームを勝たせられないし、もっともっとこだわってやっていかないと」

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