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ブーイングどころか”浅倉廉コール”。ベガルタ仙台での第一歩を支えた古巣・藤枝MYFCの愛情「だからこそ成長した姿を…」【コラム】

浅倉廉 藤枝MYFC
今夏にベガルタ仙台へ加入した浅倉廉【写真:Getty Images】



 藤枝MYFCから今夏に加入したベガルタ仙台のMF浅倉廉が、古巣との開幕節でデビューを飾った。無意識に藤枝側へ駆け出しかけた”デジャブ”のハプニングを見せつつ、後半にゴールまであと一歩というシーンを披露。試合は0−2で敗れたが、割れんばかりの拍手と“浅倉コール”に包まれ、次節の仙台ホーム開幕戦へ闘志を燃やした。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

「そこに一番悔いが残っています」

ベガルタ仙台、森山佳郎監督
ベガルタ仙台を率いる森山佳郎監督【写真:Getty Images】


 弧を描かせた一撃が、ポストの右をかすめた直後。浅倉は振り向きざまに頭を抱え、金色に染めている髪の毛をかきあげた。混戦のなかで右足を合わせた68分のシュートも、同じくポストの右を外れた。

 試合は開始12分に続いて73分にもコーナーキックから失点。放ったシュートもチーム全体で7本。藤枝の9本の後塵を拝した末に、槙野智章監督に率いられる藤枝に0-2で苦杯をなめた。

「(藤枝の)みんなからは『やらせないよ』と(試合前に)言われていたので、そこで逆に自分のところでゴールにいきたいと思っていたんですけど。結果的にはいけなかったので、そこに一番悔いが残っています」

 仙台を率いる森山佳郎監督は昨シーズンまで藤枝と対戦するたびに、身長168cm・体重64kgと小柄な浅倉が放つ、ゴールへの臭いをプンプンと漂わせるプレーに「あいつ、うざっ」と思っていたと笑う。

 味方になったいまは、逆に頼りになる存在と化す。期待に応えられなかった胸中を浅倉はこう明かす。

「自分もそうですけど、ワンチャンスを決めきるところにもっとこだわっていかないといけないし、チーム全体としてもっと、もっとシュートを打ってもいいのかな、という感じもあるので。ダイレクトシュートとか、タイミングを逃さないでシュートを打っていくのが本当に大事だと思っています」

 藤枝総合運動公園サッカー場はほぼ満員となる1万658人の大観衆で埋め尽くされた。歴代最多となる2024年9月の清水エスパルス戦の1万667人に、わずかに届かない光景が藤枝を後押しした。

 同時に藤枝のクラブ史上に残る光景を生み出した要因として、ナイトゲームにはるばる駆けつけ、アウェイのゴール裏スタンドをベガルタゴールド一色に染めあげた仙台のファン・サポーターの存在もある。

背番号「80」に託した思い

藤枝MYFC サポーター
藤枝MYFCのサポーター【写真:Getty Images】


「鳥肌が立つくらいの、ものすごく迫力のある応援をしていただいた。これだけ応援してもらっているなかで、しっかりと結果で返さないといけないと感じたので、次は絶対に勝ちたいと思っています」

 ファン・サポーターへの感謝の思いを新たにし、同時に期待に応えられなかった無念の思いを胸に刻んだ浅倉の視線は、ユアテックスタジアム仙台に大分トリニータを迎える15日のホーム開幕戦へ向けられる。

「迫力あるホームのユアスタで絶対に勝って、これから続くリーグ戦へまず勢いをつけて、優勝へ向けて一歩ずつ進んでいきたい。リーグ戦はまだまだ続くので、次に切り替えてしっかりとやっていきたい」

 藤枝でのルーキーイヤーから託されてきた「8番」ではなく、仙台では「80番」を自ら望んだ。数字の「8」にはこだわりがあったが、仙台では副キャプテンを務める武田英寿が象徴として背負って久しい。

 そこで憧れている選手の一人、元ブラジル代表のロナウジーニョがセリエAのACミランに移籍した2008年7月から背負った「80番」を選んだ。浅倉は7月の加入会見でこんな抱負を残している。

「自分の特徴はターンからのチャンスメーク。狭いエリアで前を向いてスルーパスやシュートを見せたい」

 言葉の節々が、どことなくロナウジーニョのプレースタイルをイメージさせる。

 8月8日と「8」がつく日に仙台でのデビューを果たしたのも、新シーズンへ向けた何かのメッセージなのかもしれない。迎えた試合後、浅倉は古巣のファン・サポーターで埋まったゴール裏へ向かった。

 挨拶でもブーイングどころか、割れんばかりの声援と拍手、そして浅倉コールが夜空に響きわたった。

「あらためて温かいと感じましたし、本当にありがたいと思いました」

 藤枝で誰からも愛された25歳のアタッカーはいま、古巣に関わるすべての人々から送られた熱いエールを力に変えている。仙台の地でも愛され、頼りにされる存在となって優勝とJ1昇格を目指していく。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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