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「立つべき場所に立っていれば」。走行距離は約9.5km、それでも川崎フロンターレの攻撃を動かした山本悠樹の思考【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 フリーライター photo by Getty Images
川崎フロンターレ 山本悠樹

川崎フロンターレの山本悠樹【写真:Getty Images】



 新シーズンの幕開けで、確かな存在感を放った山本悠樹。川崎フロンターレの中盤を支える男は、これまでの経験を糧にどのような変化を遂げているのか。開幕戦で見せたプレー、試合後に語った言葉から、その現在地とさらなる可能性を探る。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ] 

【2026/27明治安田J1リーグ第1節】
2026年8月9日 東京ヴェルディ 1-1 川崎フロンターレ(味の素スタジアム)

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動き方や意識を変えたのか? そう問われた山本悠樹は少し考えて…

川崎フロンターレ 山本悠樹

川崎フロンターレの山本悠樹【写真:Getty Images】


 今季も川崎フロンターレの攻撃を司る存在であることは、間違いなさそうだ。

 26/27シーズンの開幕戦となったアウェイ・味の素スタジアムでの東京ヴェルディ戦。前半から圧倒的な存在感を見せていたのが、山本悠樹だった。

「後ろの選手たちを中心に自分を見てくれていましたし、中盤でも(橘田)健人とすごく目が合っていました。相手がどこにどれくらい来ていて、その背後でヤスくん(脇坂泰斗)が空いているとか、(伊藤)達哉が入ってきているとか、そういうことを感じながらプレーできました」

 まずはビルドアップで前進し、相手を押し込みながらチャンスを作る。トレーニングキャンプを含め、プレシーズンから取り組んできた狙いをチームとして出せている手応えを感じながら、山本は川崎の攻撃を作り、ヴェルディにとってどうにも止められない存在として君臨し続けた。

 山本のプレーを見て、前半から気になったことがある。山本があまり動いていないように見えたことだ。

 実際に山本が交代するまでの86分間で走ったのは9.5kmほどであり、90分に換算しても10kmを超える程度。そもそも運動量より圧倒的なパスセンスや技術で勝負するタイプだが、ボランチとして多い数字ではない。

 動き方や意識を変えたのか? そう問われた山本は少し考えて「特にやることを変えたつもりはない」としながら、「そういえば」と言わんばかりの表情で続けた。

「立つべき場所に立っていれば…」

川崎フロンターレ ラザル・ロマニッチ

同点ゴールを挙げた川崎フロンターレのラザル・ロマニッチ【写真:Getty Images】


「そんなに動かなくても動かせるときは動かせるし、大事なときに走ればいい。今日は特に下から崩せる感じはあったので、立つべき場所に立っていれば後ろや前とつながれる感覚はすごくありました」

 周囲が自身を見てくれていたのも、立つべき場所に立っているからだったのだろう。橘田とよく目が合い、脇坂や伊藤の動きがよく見えていたのも、無駄に動き回るのではなく、ある種の余裕を持って全体を俯瞰できていたからに違いない。

 むしろ、必要以上に動かないことにより、山本を中心にゲームが動いているという印象が際立ったのかもしれない。

 そうは言っても、前半から圧倒しながら勝利できなかったのは事実だ。

 長谷部茂利監督から交代を明示された山本が「とにかく時間がないから」とダッシュでベンチに戻ったあと、後半アディショナルタイムに途中出場のラザル・ロマニッチが、相手のミスを見逃さずにゴールを決めて勝ち点1を得たことがチームとしてポジティブであるのは間違いない。

 ただ、ロマニッチのゴールが決まった際に喜びを体で表現していた選手たちも、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間は悔しそうな表情や行動を見せていた。

 当然、山本も自覚している。

「質と回数で殴り続けるしか…」

川崎フロンターレ 山本悠樹

川崎フロンターレの山本悠樹【写真:Getty Images】


「この内容だと絶対に勝てたし、勝たないといけないゲーム展開だった」

 課題は明確だ。主導権を握る展開の中で、いかにゴールを決め切るか。今回は後半開始直後だったが、劣勢の相手も集中力を持って臨む時間帯でいかに集中を切らさずに失点を防ぐか。

 あれだけ主導権を握る時間が長かったのだ。例えば強烈なストライカーがいれば、それらの課題を抱えながらも望む結果を手にできるのかもしれない。それでも、山本は仮定や他人、相手ではなく、自らにやるべきことに向き合う。

「アタッキングゾーンでの質と回数で殴り続けるしかない。今日のような展開になれば、どう考えても守っているチームのほうがキツいはずだし、暑い気候の中ではなおさら消耗が激しくなるはず。今日もプレーしながらそれは感じました。

 前半は集中して守ってくるので、焦れずに攻撃し続けながら『そこからもパスを入れてくるんだ』という感覚を相手に植え付けることも大事。そうすることで後半は崩れてくるはずだし、相手が崩れてきたときに自分たちも攻撃しやすくなる」

 具体的なイメージもある。

「例えば、左サイドでボールをもらってからゴールエリアの逆側付近に落とす。狭いところだけど、アタッキングゾーンでも相手の背後を取れるようになると、守備ブロックが構えているのとは違う場所でプレーできるし、相手も崩れてくると思う。出し手としては、その質と回数を増やしていきたい」

 言うほど簡単ではない。相当な技術を求められるが、その技術に長け、自信も持つ山本は、妥協せずに理想を思い求める。

 加えて、ただ出し手であり続けるつもりもない。

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