
鹿島アントラーズ 関川郁万【写真:Getty Images】
勝利の歓喜に沸く一方で、関川郁万には拭いきれない悔しさが残っていた。目の前で決められた一発が、守備者としての悔しさを強く突きつけたからだ。何年もの時間をともに過ごしてきたからこそ、誰よりもよく知る相手。その存在は、関川にとって特別な刺激であり、負けたくないという思いをより強くさせるものでもあった。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
ともに乗り越えた長期離脱

鹿島アントラーズ時代の師岡柊生【写真:Getty Images】
しかし、共闘を再スタートさせて3年目の2025シーズン。2人は大怪我で長期離脱を強いられた。
師岡が2025年4月20日のファジアーノ岡山戦で左アキレス腱を断裂。関川も同5月3日のFC町田ゼルビア戦で左膝複合靱帯を損傷して、9シーズンぶり9度目のリーグ優勝をピッチの外で見つめた。
先に復帰を果たしたのは関川だった。試合終了間際にMUFGスタジアムのピッチに立った今年3月18日の町田戦後。左膝前十字靱帯損傷からの復帰を目指す安西幸輝の名前もあげた関川はこう語っている。
「(安西)幸輝くんや師岡(柊生)も含めて、本当にいろいろな人の支えがあった。またみんなで一緒に試合に出られたらうれしいですね」
4月4日の水戸ホーリーホック戦で安西が、同12日の川崎フロンターレ戦では師岡が復帰。そして、5月23日に3人が同時にそろい踏む夢がかなった。関川と安西が先発し、師岡が62分から途中出場したFC東京とのJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST最終第18節を、師岡の決勝ゴールで制した。
2戦合計2-5で敗れたヴィッセル神戸との同プレーオフラウンドでも3人は共演。しかし、ホームのメルカリスタジアムでそろって先発し、2-0の快勝で意地を見せた6月6日の第2戦で軌跡は途切れた。
師岡の福岡への完全移籍が発表されたのは6月17日。突然の別れを関川はこう振り返る。
「行くなよとは思いましたけど…」

鹿島アントラーズ時代の師岡柊生【写真:Getty Images】
「(事前に)相談はなかったですね。確か『行くわ』とポンと言われましたし、僕も『そうか』とかしか言えなかったですね。もちろん『行くなよ』とは思いましたけど、結局は選手個人が下す決断なので。
それでも『このタイミングで行っちゃうのか』とは思いましたけど、小学校のときに一緒にプレーして、中学生で一緒のチームになって、プロでも同じチームで3年半も戦えたのは本当にうれしかった」
サイドハーフでの起用が多かった師岡は、本職と自負する相手ゴールに近いポジションでのプレーを求めて福岡に移った。幼なじみでもある盟友の胸中を、誰よりも理解する関川との間で余計な言葉は不要だった。
そのうえで関川は「(ゴールを)決められないようにしたいですね」と決意を新たにしていた。
別々の道を歩み始めた2人のサッカー人生で、初めてとなる公式戦での直接対決は、特に師岡が「早いな」と感じた22日のJ1リーグ第3節で、なおかつ思い出深いメルカリスタジアムで実現した。
3戦続けて左CBで先発した関川の視界に、右シャドーで先発した師岡の姿は否が応でも入ってくる。
「(対決は)本当に面白かった。ダイレクトで彼にボールが入る場面もそうですけど、相手の1トップがすらしてくるようなボールも警戒しながらのプレーだったので、やりがいも感じていました」
ともにフル出場を果たしたピッチ上では、特に言葉をかわさなかった。それでも試合後に鹿島のロッカールームを訪ねてきた師岡と近況を語り合った関川は、盟友に決められた同点弾を今後への糧に変えた。
関川が向き合う課題「そこにこだわりながら…」

鹿島アントラーズの関川郁万【写真:Getty Images】
「うーん……セットプレーを含めてちょっとやられすぎている場面が多い。簡単にクロスを上げさせないとか、簡単にシュートを打たせないとか、そういう球際の部分で一個一個勝っていかなきゃいけない」
百年構想リーグ地域リーグラウンドの18試合で、鹿島はWESTを含めた20チーム中で最少の9失点と堅守を誇った。一転して新シーズンは開幕3連勝こそマークしたものの、全試合で計6失点を喫している。
秋春制に移行する2026/27シーズンへ。関川は最終ラインの一角を担う自覚を込めてこう語っていた。
「失点しなければ負けないので。そこにこだわりながら戦っていきたい」
リザーブには韓国代表のCBキム・テヒョンがスタンバイしている。実力勝負の世界で、副キャプテンの植田直通と関川で組んできたCBコンビにメスが入れられる可能性もゼロではない。関川が前を見すえる。
「自分のよさもあるし、テヒョンのよさもあるし、植田くんのよさもある。CBはできないところをカバーし合う関係があるし、自分は自分のプレーをしていくだけだと思っています」
29日の第4節では東京ヴェルディのホーム・味の素スタジアムに乗り込む。幼なじみが攻撃の核を担う福岡戦でも繰り返された失点禍に終止符を打つべく、関川は心技体のすべてで最善の準備を整えていく。
(取材・文:藤江直人)
【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
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