
FC町田ゼルビア 昌子源【写真:Getty Images】
キャプテンに与えられたのは、これまでとは異なるポジションだった。FC町田ゼルビアで守備の軸を担う昌子源が、川崎フロンターレ戦で左センターバックとして先発。新たな役割に戸惑いながらも、試合が進むにつれて自身の武器を見つけ出していった。チームが勝利を手にした一戦で見えたのは、33歳になった今もなお、変化を恐れず進化を続けるベテランの姿だった。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
「20点取らんと許さんぞ」昌子の檄に奮起した小川

2ゴールを挙げたFC町田ゼルビアの小川航基【写真:Getty Images】
昌子が築いた新たな関係性が得点につながればよかったが、前半の町田は、シュート4本と川崎の守備攻略に苦戦。0−0で折り返すことになった。そして59分には川崎の左サイドから巧みな崩しを見せられ、脇坂泰斗の一撃を浴びることになった。
1点のビハインドを背負う中、満を持して投入されたのが、日本代表FWの小川。昌子は町田で共闘するようになるまで、一度も彼と一緒にプレーしたことがなかった。
そこで相馬に「航基ってどんな選手?」と事前に質問したところ、「なんせあいつは点を取ります」と返されたという。それを受けて、本人に「お前はすげえ年俸もらってるらしいな。20点取らんと許さんぞ」と檄を飛ばし、闘志を奮い立たせたというのだ。
日本代表の大先輩にこんな言葉をかけられたのなら、小川も奮起しないわけにはいかない。
75分は相馬のインスイングの右CKにドンピシャのタイミングで飛び込み、打点の高いヘッドで同点弾をゲット。さらにこの6分後には、右WB中村帆高の鋭いクロスに入っていくタイミングをあえて遅らせ、ファーから飛び込んで決勝点を奪ってみせた。
逆転勝利で示した町田の底力

開幕5試合を4勝1分けで終え、首位に立ったFC町田ゼルビア【写真:Getty Images】
「CKをニアでヘディングで決めた男がファーで待つっていうのは、何か嗅覚的なものなのかなと思いますし、強烈なホームデビューだったんじゃないですかね」とキャプテンは新加入FWの活躍を称賛。2−1の勝利で首位に立ったことも含めて、チームの底力を実感した様子だ。
「こういうゲームを勝ちに持っていけるチームになっていきたいとは強く思っていました。(後半の)飲水タイムにも『まず引き分けに持っていこう』と声をかけましたけど、逆転できたのは1個、成長していくうえで大事なこと。それを続けていけるようにやっていきたいですね」と町田の頼もしいリーダーはいち早く前を見据えていた。
ここからJ1だけでなく、AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)、天皇杯、JリーグYBCルヴァンカップが入ってきて、町田は超過密日程を強いられる。
それを戦い抜けるだけの選手層はいるが、より強固な集団に仕向けていく必要があるのは確かだ。リーダー・昌子は統率者として町田を常勝軍団に引き上げていくべき存在だ。
自分自身のプレーの幅を広げ、進化を続けながら、その大役をこなせれば、シーズン移行元年の今季をより充実したものにできる。
その重要な一歩を今回の川崎戦で踏み出せた印象は強い。33歳の大ベテランは力強く前進を続けていくに違いない。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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