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「守備の選手だと思われすぎている」本山遥がファジアーノ岡山で変えたい評価。「自分の中ですごく大事な1年」【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 フリーライター photo by Getty Images
ファジアーノ岡山 本山遥

ファジアーノ岡山の本山遥【写真:Getty Images】



 ヴィッセル神戸からの期限付き移籍を1年間延長し、ファジアーノ岡山で今季を戦う本山遥。負傷離脱を経て、9月2日のジェフユナイテッド千葉戦から2戦連続で先発のチャンスを得ている。守備のユーティリティーとして評価されてきた一方で、自身は「守備の選手だと思われすぎている」と感じていた。本山が攻撃面にこだわり続ける背景には、今季に懸ける特別な思いがある。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ] 

【2026/27明治安田J1リーグ第6節】
2026年9月6日 ファジアーノ 3-2 サンフレッチェ広島
(JFE晴れの国スタジアム)

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「軌道もスピードも完璧」な本山遥が決勝点を演出した一撃

26年9月6日 ファジアーノ岡山×サンフレッチェ広島より 岡山イレブンショット

2試合連続で先発を託されたファジアーノ岡山の本山遥(下段一番右)【写真:Getty Images】


 守れるウイングバックから、守ってゴールに関われるウイングバックへ──。ファジアーノ岡山の本山遥が、国内最高峰のリーグで殻を破ろうとしている。

 9月6日に行われたJ1リーグ第6節。隣県チームによる“中国ダービー”で、岡山はサンフレッチェ広島を3-2で撃破した。開幕から無敗を誇っていた相手に、今季リーグ戦初の黒星をつけた価値ある勝利。河野孝汰のハットトリックという華々しい活躍の陰で、その歓喜を攻守に泥臭く支え抜いた男がいた。

 天皇杯や今季から新設されたU-21リーグを含めると、今節は8月22日から続いた6連戦の最後だった。9月2日にアウェイでジェフユナイテッド千葉を破った前節から先発5選手を変更。木山隆之監督は、「やっぱりフレッシュじゃないと強敵相手に勝つことは難しいと思った」とターンオーバーを実行した。

 ただし、運動量が求められる右ウイングバックのポジションに変更はなかった。前節が今季リーグ戦初出場だった本山が、2試合連続で先発を託されたのだ。

「きょう先発で起用したということがすべて」

 指揮官の言葉にあるように、その期待に結果で応えた。

 50分、江坂任が左サイドから入れたクロスがゴール前を通過して右サイドへこぼれる。これに反応した背番号26は、外から回り込むようにボールに向かっていき右足を振り抜く。腰の捻りを使い、軸足を抜いて身体を弾ませながら放ったダイレクトクロスが、放物線を描いてゴール前へ。相手選手の頭上を越え、ファーでフリーになっていた河野のもとへピンポイントで届き、ヘディングシュートをお膳立てした。

「自分の中では軌道もスピードも完璧なボール」で、岡山のJリーグ史上初のハットトリックとなる河野の決勝点を演出し、応援団が集結するGATE 10に向かって拳を突き上げた。

 河野が「3点目に関して言えば、遥くんの素晴らしいボールが来た。あそこにいることも大事でしたし、本当に素晴らしいボールが来たので、合わせるだけでした」と振り返ったクロスは、意志を持っていると感じるほどコントロールされているように見えた。

 しかし、河野だけを狙い澄ましたものではなかったようだ。

「かなりの本数を蹴っている」。攻撃面で存在感を増す本山遥

ファジアーノ岡山 木山隆之監督

本山遥はファジアーノ岡山でプロキャリアをスタートさせてから、木山隆之監督の薫陶を受けてきた【写真:Getty Images】


「正直、中に孝汰がいたのは見えてなかったんです。最初に中を見たとき、マイナスにいるルカオが見えた。そっちに出そうかなと思ったんですけど、真ん中の厳しいところにボールを入れた方がいいかなと思って蹴りました」

 厳しいところにボールを入れる。これは木山監督が就任当初から攻撃面での大事な要素として言い続けてきたことだ。

 木山監督がチームを率い始めた2022シーズンに、本山は関西学院大学から加入してプロキャリアをスタートさせた。2024シーズンに悲願のJ1昇格に貢献すると、2025シーズンの開幕前にアカデミーで育ったヴィッセル神戸に完全移籍。

 しかし、その約半年後に期限付き移籍で岡山に復帰した。雉のエンブレムを胸に宿して戦うのは、今季で4.5シーズン目になる。木山監督の薫陶を受けている本山だからこそ、「相手が嫌がるようなところ」を意識して咄嗟に判断を変えたのだろう。

 とはいえ、練習で個人的にクロス精度の向上に注力していなかったら、あの軌道を蹴ることはできていなかったに違いない。

「日頃すごく練習しているし、かなりの本数を蹴っている。その成果が出た」と白い歯を見せた。

 後半開始から5分の時点で3点を奪い、2点のリードを得たが、広島からの勝利は決して簡単なものではなかった。

 61分にオベルダンが退場となり、10人となった岡山は、広島の怒涛の波状攻撃を受ける。1点差に迫られ、両サイドから容赦なくクロスを放り込まれる苦しい時間が続いた。

 本山はマッチアップする東俊希にボールが渡ったときは、素早くアプローチして、左足クロスを妨害。逆サイドからクロスが入ってきたときは、内側まで絞って3バックの右を務める大森博の背中側のカバーを徹底していく。

 90+1分には越道草太の左足クロスが大森の頭上を越えて、ペナルティーエリアの右に飛んできた。その先にいたのは、今節もゴールを決めていた元コートジボワール代表で191cmのFWセバスティアン・アレー。UEFAチャンピオンズリーグで二桁得点、オランダリーグで得点王に輝いたことのあるストライカーの手前まで、171cmの本山が下がり、間一髪のところで弾き出した。

10人の岡山を支えた本山遥の守備「危険なところをどれだけ埋められるか」

ファジアーノ岡山 本山遥

セバスティアン・アレーとマッチアップする本山遥【写真:Getty Images】


「やっぱり(退場者が出て)10人なので、どうやっても空くところというか、相手選手がフリーになるところはあると思うんですけど、その危険なところをどれだけ埋められるか。ボールサイドではクロスを上げさせないように。逆サイドに行ったら(大森)博の背中を守るのは、絶対にやらなきゃいけないことだなと思っていた。遂行できてよかったです」

 アディショナルタイムを含めると約40分間を10人全員でのハードワークで切り抜けた岡山が、5回目の中国ダービーの勝者となった。

 タイムアップの瞬間、本山は手を膝につき、その場で静止していた。この試合で両チーム最長の12.2kmを走破。リーグ屈指のチャンスクリエイト力を誇る東の左足に自由を与えない対応を前半から続けた。

「相手の攻撃はほとんど東選手の左足から繰り出されると思っていたので、そこはめちゃくちゃ集中して、絶対に仕事をさせないように意識してやっていました」

 そう振り返る本山は、首に真っ赤な引っ掻き傷をつくっていた。身を削ってもサイドの主導権は渡さない。激しいマッチアップを繰り広げていた。

 そして、決勝点をアシスト。14,613人がスタジアムに集結した注目度の高いダービーマッチで、攻守を通して勝利に貢献した。

「どう考えても、やっぱりサンフレッチェさんはJリーグの中でトップレベルのチームだと思いますし、その質の高さを試合中ずっと感じていたので。今までは、岡山は隣の県なだけで、クラブの規模的にもすごく差があったと思うんですけど、こうやって一つひとつ勝ったり良い試合をやったりすることで、少しは意識してもらえるのかなと思います」

 特別大会期間中、本山は悩んでいた。負傷離脱していた時期に、ウイングバックで出場していた選手たちが攻撃で結果を残していたからだ。

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