アビスパ福岡の代名詞だった“堅守”が揺らいでいる。2025シーズンは38試合でわずか38失点、16試合のクリーンシートを記録したが、今季は開幕7試合ですでに11失点。より攻撃的なチームへ進化しようとする中で、これまで積み上げてきた強みとのバランスに苦しんでいる。清水エスパルス戦後、選手と指揮官の言葉から浮かび上がったのは、単なる守備力低下ではない。アビスパ福岡はいま、何を残し、何を変えるべきなのか。(取材・文:ショーン・キャロル)[1/2ページ]
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2026/27明治安田J1リーグ第7節
清水エスパルス 1-0 アビスパ福岡
IAIスタジアム日本平
カードだけを見れば注目試合とは言い難いが…
先週土曜日に行われた清水エスパルス対アビスパ福岡は、少なくともカードだけを見れば、その週末で最も注目を集める試合とは言い難かった。
両チームとも開幕6試合でわずか勝ち点4、1勝ずつ。まだ始まったばかりとはいえ、J1の順位表では下位に沈んでいたからだ。
明治安田J1百年構想リーグ王者のヴィッセル神戸と2025年Jリーグ王者の鹿島アントラーズの対戦、あるいは国立競技場で行われたFC町田ゼルビア対横浜F・マリノスほどの華やかさはなかったかもしれない。
しかし、IAIスタジアム日本平で行われたこの一戦にも、十分な興味深さがあった。
なぜなら、世界中のあらゆるレベルのリーグで、大多数のチームが毎週のように直面している課題が、この試合には凝縮されていたからだ。
今季、現実的にタイトルを狙える2チームの対戦ではない。かといって、今後数カ月にわたって残留争いをする運命を受け入れているような2チームでもない。
むしろ、激しく、見応えがあり、拮抗したこのゲームが映し出したのは、順位を上げていくために「現状を維持するべきなのか、それとも勝負に出るべきなのか」という判断の難しさだった。
伝統の堅守が揺らぐアビスパ福岡
清水は、Jリーグ草創期には屈指の強豪クラブだった。しかし、長らくトップクラスの座からは遠ざかっており、現在はリーグ優勝を2度経験している吉田孝行監督のもと、新たな再構築の時期を迎えている。
一方の福岡は、ようやく「昇降格を繰り返すクラブ」というイメージから脱却し、ここ数年はクラブ規模を上回る成果を残してきた。
ただ現在は、彼らの代名詞ともいえる守備の堅さと、2023年に獲得したYBCルヴァンカップに続くタイトルを狙えるチームへ成長するために必要な、より攻撃的なスタイルとの間で、バランスを見つけることに苦しんでいる。
2023年のタイトル獲得を支えたのは、強固な守備だった。
九州のクラブは伝統的に日本サッカー界でも崩すのが難しいチームの一つであり、2025シーズンにもJ1屈指の守備力を誇った。シーズンを通じて喫した失点はわずか38。1試合平均1失点で、16試合のクリーンシートを記録した。
しかし、その数字は百年構想リーグで大きく変化した。
1試合平均失点は1.5まで増え、20試合で無失点に抑えたのはわずか2試合だった。
その不安定さは今季も続いている。
「堅守という部分への意識が少し薄れてきている」
清水に0-1で敗れたことで、塚原真也監督率いる福岡は開幕7試合で11失点。クリーンシートはわずか1試合となった。
「やっぱり僕が来る前、アビスパというのは堅守というか、クリーンシートだったり、最低限1失点に抑えて、1-1、2-1でゲームを終わらせるようなチームでした」
試合後、悔しさをにじませたGK小畑裕馬はそう振り返った。
「逆に攻撃に出ていくというか、攻撃力の部分では、この数試合である程度点数も取れています。ただ、攻撃に特化した時に穴が空いてきているのも事実なので、そこはバランスを見ながらやらないといけない。でも、最低限守るというところはアビスパの良さでもあるので、そこはもっと突き詰めていかないといけないと思います」
静岡の地で福岡が今季J1での得点数を「9」から伸ばすことはできなかったものの、試合の入りではアウェイチームの方が積極的だった。
開始から15分ほどは清水を自陣に押し込み、主導権を握った。
しかし、最後のプレーの精度を欠いた。多くの場合、希望を託すようなクロスをペナルティーエリアへ送り、それを清水GK梅田透吾に難なく処理された。
そして、その勢いのある立ち上がりを過ぎると、次第に清水が優位に立つようになった。
「チームというかクラブとして、堅守速攻というのはアビスパに根付いていたところがありました」
MF秋野央樹はそう話した。
「そこからもう一段階上を目指すというところで、ボール保持だったり、アタックのところを強化してきた一方で、堅守という部分への意識が少し薄れてきているところがあるのかなと思います。いろいろな意見や考え方があると思いますけど、僕個人としては、もう少し自分たちがボールを持つ時間を増やさないといけないと思っています。
サンドバッグとまでは言わないですけど、前半からあれだけ相手にボールを持たれて、自陣に押し込まれる展開が長くなれば、やっぱり最後のところで踏ん張りが利かなくなってくると思うので。割り切って守るところと、自分たちのボールになった時にどう動かしていくのか。もっと効果的なボールの動かし方が必要なのかなと思います」
福岡がなかなかクリーンシートを記録できていない理由について問われると、塚原監督も、より攻撃力のあるチームへ変わろうとしている過程に言及した。
「一つではないと思います」
そう前置きした上で、指揮官は続けた。



