FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で全4試合に先発し、今夏にはフランスの名門リヨンへステップアップ。日本代表の中でも、中村敬斗の立ち位置は確実に変わりつつある。26歳となった今、若手として先輩たちに引っ張られる側ではなく、次の4年間ではチームを牽引することも求められる。それでも本人が口にしたのは、「本当に代表はいつ選ばれなくなるか分からない」という言葉だった。2027年のAFCアジアカップ、そして2030年W杯へ。中村はどんな覚悟で新たな競争に挑もうとしているのか。(取材・文:元川悦子)
「本当に代表はいつ選ばれなくなるか分からない」
2027年のAFCアジアカップ サウジアラビア大会優勝という目標に向け、24日のウルグアイ代表戦から本格的に再始動する日本代表。2019年のUAE大会準優勝、2024年のカタール大会8強と、過去2度の挑戦でアジア王者に手が届いていない森保一監督としては、今度こそタイトルを獲得しなければいけない。
大舞台前の活動は9・10月シリーズ、11月のシンガポール遠征含めて合計6試合のみ。だからこそ、1つひとつのゲームが重要となる。
「明日のメンバーについては、基本的に(21日の)月曜日までに到着した選手を中心に構成したい」と指揮官は前日会見で発言している。となれば、最前線に後藤啓介、シャドーに鈴木唯人と堂安律が並ぶ形が有力か。
この3人とともに攻撃に厚みを加えていく役割を担いそうなのが、左ウイングバック(WB)に陣取るであろう中村敬斗だ。
彼が代表デビューを飾ったのは、2023年3月のウルグアイ戦(東京・国立)。奇しくも今回と同じ相手である。
「本当に代表はいつ選ばれなくなるか分からない。毎回の活動で『選ばれたい』と思ってプレーしているので、爪痕を残すのはつねに意識していること。今まで3年以上、選んでもらってますけど、インパクトが必要じゃないなんて思わない。あの時(初代表)を忘れずにフレッシュな気持ちでのぞみたいです」
26歳になった彼は、デビュー1年目に4ゴールを固め取りし、2024年アジアカップへの挑戦権をつかんだ3年前のような勢いを今回も見せるべく、気合を入れていくつもりだ。
ただ、前回のアジアカップは思うような結果を残せなかった。
「移籍できるっていうのは分かっていた」
中村敬斗も3試合に先発起用され、初戦のベトナム戦ではゴールも挙げたが、重要な準々決勝・イラン戦ではピッチに立てなかった。
「前回大会は本当に悔しい思いを個人的にもチームとしてもした。優勝というところはしばらく取れていないので、マストだと思う。チームとしてみんなで取り組んでいくべきですけど、まあ優勝できると信じてます」
本人は苦い過去を糧に、今度は森保監督に優勝をプレゼントする覚悟で、ここからの4か月間を過ごしていくという。
それだけの飛躍を彼はしっかりと示している。
今夏の北中米ワールドカップ(W杯)では、三笘薫らが負傷欠場する中、全4試合に先発し、左サイドで奮闘。重要な初戦・オランダ戦では値千金のゴールも叩き出した。
その後の去就が注目されていたが、今夏の欧州移籍市場クローズ直後にフランス国内でのジョーカー枠を使って名門・リヨンに加入。ようやくフランス2部から脱出することに成功した。
9月1日までの移籍期間内に正式決定の一報が流れなかったことから、日本国内では「中村敬斗は新シーズンも2部なのか」といった懸念の声も出ていたが、「移籍できるっていうのは分かっていたので」と本人は全く動揺していなかったことを明かす。
「どこに行くかっていうことで、リヨンが僕の中で最優先だった。『僕を取れない』となったら、もちろん他のチームに行ってましたけど、フランスからフランスの移籍には特別なジョーカー枠があるので、全然大丈夫でした」と彼は首尾よく新天地に赴き、心身両面で充実した状態で代表に戻ってきた。
「W杯で優勝、あるいはベスト8、4に行くようなチームは、世界のビッグクラブと言われるところでみんなプレーしている。僕自身は2部でプレーしてたので、自分自身がステップアップして、レベルの高い環境に行かなきゃいけないと思っていたので、リーグ・アンに戻ってこられてよかった。やっぱり選手は日頃の環境でのプレーがそのまま出ると思うので、すごく大事ですね」
久保建英らと共にチームを牽引する存在へ
今回のウルグアイ戦の招集メンバーの中では中村敬斗は年齢的に真ん中から上になりそうだ。
これまでは30代の遠藤航や伊東純也らに引っ張ってもらっていたが、ここからは自分が中心となって戦っていかなければいけない。
同じ2000年生まれの佐野海舟や瀬古歩夢、1つ下の久保建英を含め、2026年W杯に参戦した25歳前後の彼らは、2030年W杯に向かっていく日本代表の主軸になるべき存在だ。
攻撃陣にしても、4年後には30代になる堂安や前田大然らに頼り続けるわけにもいかない。
「若い選手が入ってきて、引っ張る気持ちももちろんありますけど、本当に毎回が競争であって、積み上げがあるにせよ、つねにチャレンジャー的な気持ちで挑まないといけない。僕はそう思っています」と中村敬斗は飽くなき向上心をピッチにぶつけていくという。
今回のメンバーであれば、左WB要員は先輩・相馬勇紀と左右兼務の伊東、シャドー・トップにも入る塩貝健人、ロサンゼルス五輪世代の若手筆頭である齋藤俊輔と多彩な人材がいる。
2027年3月以降に大岩剛監督が就任すれば、現在アジア大会を戦っている小杉啓太や横山夢樹らも競争に加わってくるだろう。
そういった面々と切磋琢磨しながら、「代表を勝たせる仕事」を毎回のように見せていくことで、中村敬斗は突き抜けた存在になれる。
本人もここからの4年間のサバイバルに負けるつもりは一切ない。中堅としてチームを引っ張りながらも、挑戦者マインドを前面に押し出し続けられるのが、この男の大きな魅力だ。
「今は新チームのスタートですけど、継続もありつつ、チームとして進化していくことが大事。戦術や新しいことを取り入れたりして、またみんなで1つになってレベルを上げていけばいい。(森保監督が話している)3バックと4バックの可変についても、4枚になればより攻撃的になる部分もあると思いますし、僕はチームで4枚でやっていますから、違和感なくやれると思います」
前向きに語る背番号13は、第3次森保ジャパンの初陣で得点に直結するプレーを見せられるのか。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2026年北中米大会まで9回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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