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J1 2026.10.14 12:30

新井悠太がヴェルディに灯す希望。「今までにいない左サイドバックに」相馬監督の大胆起用で見えた可能性【コラム】

東京ヴェルディ 新井悠太
広島戦でプロ入り後初めて左サイドバックを務めた、東京ヴェルディMF新井悠太【写真:Getty Images】



 右利きながら左サイドバックとして日本代表でも活躍した相馬直樹。その現役時代を想起させる大胆な起用が、東京ヴェルディの新監督として迎えた初陣で見られた。抜擢されたのは、プロ入り後初めて左サイドバックを務める23歳の新井悠太だ。11日のサンフレッチェ広島戦は0-2で敗れ、チームは最下位に転落したものの、新井は持ち味のドリブルから決定機を演出。「今までにいない左サイドバックになれるんじゃないか」。本人と指揮官の言葉から、大胆なコンバートの狙いと新たな可能性を探る。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ] 

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【2026/27 明治安田J1リーグ 第9節】
2026年10月11日 東京ヴェルディ 0-2 サンフレッチェ広島
(味の素スタジアム)

初めての左サイドバック。それでも「驚きはなかった」

東京ヴェルディ 新井悠太
複数のポジションを経験してきた東京ヴェルディMF新井悠太【写真:Getty Images】


 切れ味鋭いドリブルを武器とするアタッカーとして、新井悠太はプロの舞台で戦ってきた。

 群馬・前橋育英高校から進んだ東洋大学在籍中に、JFA・Jリーグ特別指定選手として東京ヴェルディに登録された2023、24シーズンを含めて、一貫してMF陣の一人に名を連ねてきた。

 正式加入した昨シーズンにはレギュラーに定着。<3-4-2-1>システムのもと、主戦場の左ウイングバックだけでなくシャドー、さらに身長166cm・体重65kgのサイズながら1トップでも先発した。

 今年前半のJ1百年構想リーグに続いて、秋春制に移行した今シーズンも攻撃陣の一役を担った。

 右ウイングバックで先発した9月19日の浦和レッズ戦では、システムが<4-4-2>に代わった後半から左サイドハーフとしてプレー。3失点で完敗した敵地で一矢を報いる今シーズン初ゴールを決めている。

 しかし、代表ウィークによる中断をはさみ、浦和戦以来のリーグ戦となった11日のサンフレッチェ広島との第9節。4試合連続で先発を果たした新井のポジションは、左サイドバックに変わっていた。

 しかし未知のポジションに対して、それほど驚きはなかったと新井は試合後に明かしている。

「プロに入って初めてプレーするポジションですけど……前のシーズンでもいろいろなポジションでプレーしていたので、その意味で驚きというものはあまりなかったのかな、と」

なぜ新井悠太だったのか? 相馬直樹監督が明かした抜擢の理由

東京ヴェルディ 相馬直樹監督
10月8日に東京ヴェルディの監督に就任した相馬直樹【写真:Getty Images】


 代表ウィーク中の9月29日に行われたヤマザキビスケット・ルヴァンカップ(旧YBCルヴァンカップ)の1stラウンド2回戦で、ヴェルディは延長戦の末にJ2のサガン鳥栖に1-2で苦杯をなめた。

 リーグ戦に目を向ければ浦和戦を終えた段階で、4分け4敗と唯一の未勝利で19位に低迷していた。

 迎えた今月5日。ヴェルディは2022年6月から指揮を執り、2023シーズンに16年ぶりとなるJ1昇格を果たし、2シーズン連続でJ1残留を勝ち取ってきた城福監督の解任を電撃的に発表した。

 森下仁志コーチが監督代行を務め、天皇杯JFA第106回全日本サッカー選手権大会 3回戦でJ3のガイナーレ鳥取をPK戦の末に下してから一夜明けた8日。相馬直樹監督の就任が発表された。

 古巣の鹿島アントラーズをはじめ、FC町田ゼルビアと川崎フロンターレ、大宮アルディージャ、鹿児島ユナイテッドで監督を歴任した相馬監督は、翌9日からトレーニングの指揮を執った。

 広島戦までに与えられた時間は2日。わずかな間に新指揮官はシステムを<4-4-2>に変更し、さらに自身が現役時代に務めたポジションでもある左サイドバックに右利きの新井を抜擢した。

 なぜシステム変更に踏み切ったのか。広島戦後の公式会見で相馬監督はこう語った。

「全体として前へのベクトルをしっかり作りたい、表現したいという狙いがありました」

 シーズン途中で4バックへ移行するうえで、左サイドバックには誰を起用するのか。

 ヴェルディには今シーズンに鹿島から期限付き移籍で加入し、左ウイングバックに定着している左利きの溝口修平がいる。22歳の溝口は鹿島時代では左サイドバックを主戦場としてきた。

 しかし、契約の関係でベンチにすら入れなかった鹿島との第4節を除いて、全7試合で左ウイングバックとして先発出場してきた溝口は、広島戦で今シーズン初めてベンチでキックオフを迎えていた。

 新天地で初めてタクトを振るう一戦でカギを握る左サイドバックに、このポジションでプレーした経験のない新井を大抜擢する。相馬監督は「既存のスタッフを含めた話し合いで決めました」と明かした。

「4枚になるのであれば『対人のところでの強さが必要だよね』となったなかで『そこは任せられるのではないか』と。さらに『前に出ていく力もある』といった話のなかで新井を起用する形になりました」

 前出の鳥栖戦と鳥取戦で、新井はともに左ウイングバックで出場していた。青天の霹靂にも映るコンバートに関して、相馬監督から個人的には指示を受けていない。それでも、と新井が続ける。

「サイドバックの動き方は、練習でチーム全体に対して落とし込みがありました。そのなかで僕自身は、相馬監督からどのような役割を与えられているのかをしっかり認識して試合に挑めました。

 ウイングバックでプレーしていても、最終ラインが5枚になる場面はあったので。練習で左サイドバックに配置されたときから、自分の見える景色に関してはイメージしながらできたと思っています」

24分の決定機で見せた突破力。新ポジションでも生きた武器

東京ヴェルディ 新井悠太
特別指定選手時代を含め、東京ヴェルディで5シーズン目を迎えた新井悠太【写真:Getty Images】


 対人での強さを発揮しながら、積極果敢に前へ出ていく。タスクが具現化したのは24分だった。

 左タッチライン際の敵陣で深い位置まで攻めあがった新井が味方からのパスを受け、縦を切るような体勢でマークについてきた広島の右ウイングバック、新井直人との1対1をスタートさせた。

「ここは自分の武器でもあるドリブルを出していこう、と。まずは思い切って縦に仕掛けました」

 縦への突破を図った新井を、相手もしっかりと追ってくる。そしてゴールラインが近づいた地点で左足からクロスをあげる素振りを見せる。次の瞬間、鮮やかに切り返したフェイントに相手は置き去りにされた。

 そのまま中央方向に侵入した新井は右足でクロスを供給する。相手ゴール前で完璧なタイミングで宙を舞ったFW染野唯月が頭で捉えるが、シュートはGK大迫敬介の正面をついてしまった。

 両チームともに無得点の均衡が、ついに破られるかと思われたヴェルディ最大の決定機。新指揮官から求められる仕事を演じた新井は「いいボールをあげられた」と振り返りながらも、こんな言葉をつけ加えている。

「他の場面でももっと、もっと仕掛けられたんじゃないか。個人的にはそう思っています」

 特別指定選手時代を含めて、城福前監督から熱血指導を受けた。例えば百年構想リーグの鹿島戦では、66分に途中投入されながらも、勝利目前の90分に交代させられる「インアウト」の屈辱を味わった。

 続く柏戦では決勝ゴールをゲット。試合後には「インアウトも経験して、ここでプレーできるのが当たり前ではないと再確認できた」と感謝した新井は、城福前監督に学んだものを問われてこう語っている。

「守備を含めて自分がやらなければいけないプレーもそうですけど、プロの世界で生き残っていくうえでどのようなプレーが求められるのか、といった気持ちの部分も本当にたくさん学んだと思っています。

 ヴェルディのベースはそこにあると思うし、絶対に忘れてはいけない部分でもある。これからも自分のできるプレーと、相馬監督に求められるプレーとをしっかり理解しながらやっていきたい」

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