浦和レッズの20歳、笹修大はなぜ先発から外されたのか。今夏、J2のFC今治から加入した若きMFは、開幕から2試合連続でスタメンに抜擢されながら、その後は出場機会が減少。悔しさを味わう日々が続いた。しかし、曺貴裁監督は「調子が悪かったから使っていないわけではない」と、その起用法に込めた意図を明かしている。指揮官が期待する才能とは何か。そして、20歳の新星は試合に出られない時間をどのように成長へとつなげたのか。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
指揮官が笹修大を先発から外した理由
「選手は初めてJ1に臨む試合と、数試合たったときとでは体験値が違う。自分のプレーを忘れてしまいがちなときや、思い切りがなくなったときに、あえてスキップさせるのはどの監督も考えていると思う。
彼は初めてJ1でプレーしたなかで、最初の1、2試合でJ1の厳しさを同時に感じた選手だったと思っている。そこからどうはいあがっていくのか、というところで、ここ最近は非常にアグレッシブだった」
リバウンドメンタリティーを試された期間を、どのように受け止めていたのか。笹もこう振り返る。
「試合に出られない期間はすごく悔しい思いもしましたけど、結果を出すという個人的なところよりも、いまの自分がどのようなプレーで勝利に貢献できるのか、というところだけにフォーカスしてきました。
何よりもチームの勝利が第一なので。怪我を含めて出られなくなっても腐らずに、ピッチの外からみんなのプレーを見てきたなかで、うまく連携しながら自分のよさを随所で出せるようになったと思います」
自問自答の末に弾き出された「自分のよさ」とはゴールに絡む仕事。相手よりも先に、あるいは相手よりも前でタイミングをずらして跳ぶ。高校時代から追い求めてきた競り勝つ術をプロ仕様に磨き上げた。
水戸戦で決めた決勝弾にも、相手との駆け引きや直前の金子への耳打ちを含めて経験のすべてが凝縮されていた。よほど会心だったのだろう。笹は「プロでも自分のストロングになりつつある」とこう続けた。
「サポーターのみなさんやチームメイトに認められたのではないかな」
「天皇杯で決めたゴールで吹っ切れました。いまは自信を持ってゴール内に入っていく姿勢と、自分が絶対に決めてやるというギラギラとした気持ちがどんどん前面に出てきて、それがいい方向に向かっています」
先発から離れている間の8月31日に20歳になった笹は、2年後の2028年に開催されるロサンゼルス五輪世代でもある。浦和で成長を追い求める先に、まだ見ぬ代表入りももちろん照準にすえられている。
「自分の心のなかでそこは絶対に入りたい、という気持ちでプレーしています。さらに上を目指していくなかで、Jリーグでしっかり結果を残すという意味でも今日でまた一歩前進できたのかなと思っています」
待望のJ1初ゴールで黒星が先行していた浦和の成績を5勝5敗の五分に戻した。敵地のゴール裏をチームカラーに染めたファン・サポーターを熱狂させ、今夏の加入時に描いた夢のひとつもかなえた。
苦境から自力ではいあがり、初々しい雄叫びで喜びを表現した笹に曺監督もこんな言葉を残している。
「この前の(横浜FC戦での)90分間でのパフォーマンス、そして今日の途中出場からのパフォーマンスは、僕というよりもファン・サポーターのみなさんやチームメイトに認められたのではないかな、と」
次は先発への復帰を射止め、浦和の上位進出に貢献していく過程で年代別の代表入りも手繰り寄せる。名字の笹(ささ)をもじり、今治時代から「33」を背負うホープの夢は果てしなく広がっていく。
(取材・文:藤江直人)
【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
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