昨季はキャプテンを務めながら、今季はリーグ戦出場ゼロ。柏レイソルのDF犬飼智也が、浦和レッズ戦でついに先発のチャンスをつかんだ。過密日程のなか、リカルド・ロドリゲス監督は先発9人を変更する大胆な決断に踏み切り、チームは4-0で快勝した。出番がなくても準備を続け、若手の手本となってきた33歳。苦しい日々をどう乗り越え、チームを支えてきたのか。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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今季出場0から先発抜擢された犬飼智也
10月にJ1、YBCルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACL ELITE)8試合という超過密日程を強いられた柏レイソル。17日のJ1・名古屋グランパス戦の敗戦、続く21日の同・FC東京戦でドローと2戦未勝利に終わった時点では停滞感も見て取れたが、24日の同・鹿島アントラーズ戦で勝利し、再び勢いが生まれた印象もある。
とはいえ、10月31日のJ1第13節・浦和レッズ戦は27日のACL ELITE・ラーチャブリー戦から移動を伴う中3日。気象・環境面も大きく異なるため、リカルド・ロドリゲス監督もチームマネージメントの工夫が求められた。
指揮官が踏み切ったのは、9人の大胆スタメン入れ替え。とくに目を引いたのが、今季リーグ戦出場ゼロだった満田誠、犬飼智也を抜擢したことだ。
満田の場合は今夏、柏に加入し、リカルド流のスタイルに慣れきっていないことがベンチ外の要因と見られたが、犬飼は浦和時代から指揮官に師事していた選手。しかも2025年は柏のキャプテンを務めていたキーパーソンだ。
「ケガ以外でこんなに試合に出ないことは近年なかったので。でも一応、何とかやってます」と33歳のDFは、彼らしい自然体で今季の苦境と向き合ってきたようだが、焦燥感や危機感が募らないはずがない。
ここで巡ってきた千載一遇のチャンスをつかまなければ、ここからチームの主力組に入り込むことはできない。この浦和戦は彼にとって非常に重要な意味を持つ一戦だったのだ。
「最近のレイソルは持たれても慌てない」
序盤はコンディション面で秀でる浦和が飛ばしてきたこともあり、柏はやや守勢に回る展開を強いられた。
開始14分にはコーナーキックの流れから右サイド・金子拓郎に鋭いクロスを入れられ、左から工藤孝太に飛び込まれるピンチもあったが、何とかやり過ごし、自分たちのペースへと持っていった。
迎えた37分。柏は中盤でボールを拾った垣田裕暉から満田、遠藤渓太とつながり、背番号5が強引にシュート。これがDF宮本優太に当たって小泉佳穂が右足で押し込み、待望の先制点を手に入れる。
前半はシュート数こそ柏の9本に対して浦和が7とほぼ互角の展開に持ち込まれたが、無失点で前半を乗り切った犬飼としては悪くない感触を得たに違いない。
そのまま後半に突入したが、浦和が小森飛絢を投入し、攻撃のギアを上げてきたのを見計らって、リカルド監督はベンチに温存していた古賀太陽と山内日向汰を起用。犬飼と満田は52分間のプレーでベンチに下がることになり、外からチームメートの戦いを見守った。
そこからの柏のギアアップは凄まじく、68分に左右の両サイドで献身的プレーを見せた弓場堅真が値千金の2点目をゲットする。
78分に宮本が2枚目のイエローを受けて退場し、11対10の数的優位に立った後には、久保藤次郎と原田亘が立て続けにゴール。終わってみれば4-0の完勝で、確実に3ポイントを積み上げ、しっかりと上位の座をキープした。
「この試合は意外と持たれる時間も多かったんですけど、最近のレイソルは持たれても慌てないし、『持ちたい、持ちたい』にならずに相手ペースの時もしっかり戦えている。新たな強みを作れているのかなと感じます。
もちろん理想はずっとボールを持つことですけど、そんなわけにもいかない。持てない時でもバタバタしていないのは今日、久しぶりに試合に出てみて感じましたし、チームとしてまた一つ、階段を上った印象はあります」
犬飼はこう分析。古賀という絶対的リーダーが出ていなかった前半の時間帯に、彼が中心となって冷静なゲーム運びができたことを前向きに捉えている様子だ。
控えに甘んじている選手たちがいきなり投入されて結果を出すというのは、柏がこの先も複数タイトルを目指して戦っていくうえで、必要不可欠なテーマである。
人数の多い柏レイソルこその難しさ
絶対的主軸の小泉も「率直なことを言うと、このタイミングでこれだけメンバーをいじるとは思っていなかった」とこの日のリカルド采配に驚きを覚えたという。
ある意味、チームにとっては“一つの賭け”だったが、犬飼や満田、後半頭からピッチに立った細谷真大ら実力者たちが本来に近いパフォーマンスを示したことで、犬飼が言うように「また一つ階段を上った」ということになりそうだ。
「今季のレイソルは(登録選手が40人以上と)人数が多いんですけど、連戦を戦ううえでこの陣容は必要なところだと思います。人数が多い難しさというのも、チーム作りを進めるうえで必ずあること。
それでも、今いる選手たちの人間性もあって、今のレイソルはいいチームになっていますね」
犬飼はそう話したが、彼や仲間隼斗、原川力や30代の年長者たちが文句を言わず、 ひたむきに日々のトレーニングに取り組んでいる姿勢はチームの底上げに大きく寄与している。
「それこそワン君(犬飼)や隼斗君だったり、ベテランの選手たちが頑張ってくれている中で、自分たち下の選手が腐っていたらダメだと思う。年上の選手たちが本当にいい見本となってチームを引っ張ってくれているので、自分たちもそこに引っ張られているのかなと感じます」
満田も真摯に語ったが、本当に犬飼の献身性やフォア・ザ・チーム精神がプラスに働いているのは間違いない。
そこは誰もが認めるところだ。



