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J1 2026.11.3 10:00

このまま終わってしまうんじゃないか。宮市亮が明かした遠野大弥の苦悩。2度のアキレス腱断裂を経て、古巣・川崎戦で復活弾【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 フリーライター photo by Getty Images

横浜F・マリノス×川崎フロンターレ戦より 遠野大弥

横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:Getty Images】



 横浜F・マリノスは11月1日、2026/27明治安田J1リーグ第13節で川崎フロンターレに4-2で勝利した。先制ゴールを決めたのは、かつて川崎でプレーしたMF遠野大弥。昨季から2度のアキレス腱断裂に見舞われ、長くピッチを離れた27歳が、古巣との一戦で輝きを放った。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。苦難の日々を経て、遠野は何を思い、再びピッチに立っているのか。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ] 

【2026/27 明治安田J1リーグ第13節】
2026年11月1日 横浜F・マリノス 4-2 川崎フロンターレ
(日産スタジアム)

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古巣・川崎戦に臨む遠野大弥。2度の大ケガに見舞われた苦難の1年半

26年1月チーム始動日 遠野大弥

2度の右アキレス腱断裂の大ケガを負い、長期間のリハビリを余儀なくされた遠野大弥【写真:編集部】


 スティーブ・コリカ監督体制に移行した今季、明らかにチーム状態が良くなっている横浜F・マリノス。公式戦の黒星は8月7日のJ1開幕・鹿島アントラーズ戦と8月29日のJ1第4節・浦和レッズ戦の2敗だけ。9、10月は12戦無敗という手堅い戦いを見せているのだ。

 ただ、J1に限って言うと、セレッソ大阪、ジェフユナイテッド千葉、東京ヴェルディ、名古屋グランパスに直近4戦連続ドロー。下位チームからポイントを取りこぼしたのは痛かった。

 それでも、まだ上位との差はそこまで開いていない。11月1日の川崎フロンターレとの神奈川ダービーに勝ち切れれば、浮上の目も出てくる。だからこそ、確実に勝ち点3を奪う必要があった。

 キャプテンマークを巻いた宮市亮も「最高の舞台をつかむのも、手放すのも僕ら次第。苦しい時間は必ず訪れると思うけど、弱い自分と戦えるか。それが勝敗を分ける」と熱く語って仲間を鼓舞し、試合に入ったという。

 この川崎戦に特別な思い入れを持ってピッチに立った1人が、トップ下に陣取った遠野大弥だ。

 ご存じの通り、彼は2021~2024年の4シーズン川崎に在籍。圧倒的強さを誇った栄光の時代を身を持って経験してきた選手だ。

 ただ、本人の中では「もっと中心的なポジションでプレーしたい」という思いが年々強まり、2024年末には川崎を離れることを決断。2025年からマリノスに赴いたのだ。

 同年頭の宮崎キャンプでは「自分に求められているのはゴールのところ。『2ケタは期待している』と(当時のスティーブ・ホーランド)監督からも求められていますし、それがマストだと考えています」と気合を入れていたが、チームが苦境にあえいでいた6月のFC東京戦で右足アキレス腱を断裂。シーズンを棒に振る形になってしまった。

 最初の苦境を何とか乗り越え、2026年J1百年構想リーグで復帰を果たしたが、3月の川崎戦で再び同箇所を負傷。古巣との対戦で2度目の重傷に見舞われたのは、本当に辛かったに違いない。

「このまま終わってしまうんじゃないか」。宮市亮が明かした遠野大弥の弱音

右アキレス腱を断裂で離脱した遠野大弥のユニホームをかかげる宮市亮 25年7月5日 横浜FC戦

宮市亮は昨年7月の横浜FC戦後、遠野大弥のユニホームを掲げた【写真:Getty Images】


「大きなケガを繰り返すと、『この世の終わり』じゃないけど、自暴自棄になる時期もある。僕自身も『このまま終わってしまうんじゃないか』と何度も思いましたけど、彼がポロっとそんな言葉を口にしたのは忘れられないですね」と同じような境遇を経験してきた宮市亮も神妙な面持ちで言う。

 先輩に弱音を吐くほどメンタル的に不安定な状況もあったが、遠野は強靭な精神力で克服。9月29日のYBCルヴァンカップ1stラウンド2回戦・モンテディオ山形戦で公式戦復帰を果たした。

 そして、10月に入ってからは貴重な戦力として存在感を増している。10月21日のヴェルディ戦では復帰後初ゴールも挙げ、フィニッシャーとしての鋭さを取り戻しつつある。それをこの川崎戦で遺憾なく発揮したかった。

 待望の瞬間はいきなり訪れた。強度の高い入りを見せたマリノスは序盤から圧をかけ、開始12分に右コーナーキック(CK)をゲット。松村晃助が蹴り、相手DFがクリアしそこねたボールを拾った遠野が迷わず右足を一閃。豪快なシュートをゴールネットに突き刺したのである。

「(CKからの流れで)こぼれてくるというのは、前日の練習からの狙い目だった。『あそこに来たら思い切り足を振ろう』と考えて打ちました。あと、1本目は自分のところを目がけて蹴るという指示が出ていたので、本当に吹かさずに良いシュートを蹴れたと思います」と本人もしてやったりの表情を浮かべる。

 開始2分に切れ味鋭いシュートを右ポストに当てていたこともあり、「この日の遠野は得点の匂いが色濃く感じられる」という状態だった。それを実際に結果に結び付けられるところが、彼の底力だと言っていいだろう。

 この先制点を手始めに、マリノスの猛攻が始まった。28分には負傷したジョルディ・クルークスとの緊急交代を強いられた近藤友喜が矢のような一撃で2点目をゲット。その後、1点を失ったものの、前半終了間際の41分にエースFW谷村海那の今季7ゴール目が飛び出し、試合を3-1で折り返すことに成功したのだ。

川崎の強みを封じた中盤の守備。遠野大弥が果たした役割

リーグ戦5試合ぶりの白星を挙げた横浜F・マリノス

遠野大弥は山根陸や松村晃助らとともに中盤で良い働きを見せた【写真:Getty Images】


 実際、前半のシュート数はマリノスの10本に対し、川崎はわずか2本。川崎のストロングである山本悠樹・橘田健人の両ボランチを起点としたパスワークが全くと言っていいほど出せず、停滞してしまった。その展開に持ち込んだのも、強度の高い守備ができていたから。

 遠野は山根陸・松村という2023年のFIFA U-20ワールドカップ組の若きボランチとともに中盤で良い仕事を見せ、中盤を支配することに貢献した。それも見逃せない点と言っていい。

 後半もマリノスは松村の右CKからジェイソン・キニョーネスが4点目を奪い、勝利をほぼ確実にした。その後は川崎も猛攻を見せ、1点を取り返して追いすがったが、今季のマリノスの守備は堅い。

 遠野は57分に天野純と交代してベンチに下がっていたが、味方の戦いを穏やかな気持ちで見守ることができたのではないか。そして、タイムアップの笛が鳴り、数々の縁がある川崎戦で自分が先制点を奪って4-2で快勝したことで、彼はまた1つ、完全復活への階段を上ったはずだ。

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