浦和レッズの20歳、笹修大はなぜ先発から外されたのか。今夏、J2のFC今治から加入した若きMFは、開幕から2試合連続でスタメンに抜擢されながら、その後は出場機会が減少。悔しさを味わう日々が続いた。しかし、曺貴裁監督は「調子が悪かったから使っていないわけではない」と、その起用法に込めた意図を明かしている。指揮官が期待する才能とは何か。そして、20歳の新星は試合に出られない時間をどのように成長へとつなげたのか。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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笹修大が金子拓郎に伝えたこと
必然に導かれた決勝弾であり、待ち焦がれたJ1初ゴールだった。
試合開始早々に退場者を出し、10人で粘り強く戦う水戸ホーリーホックのゴールをこじ開けられないまま迎えた後半アディショナルタイム92分。敵地・水戸信用金庫スタジアムに歓声と悲鳴とが交錯した。
右サイドから金子拓郎が放ったクロスに、ファーで宙を舞った長沼洋一が完璧なタイミングで頭をヒットさせる。強烈な一撃はしかし、水戸のGKヤクブ・スウォビィクに右手一本で阻止された。
両チームともに無得点の均衡がついに破られたかと思われた直後。プレーが途切れた間に、マテウス・サヴィオに代わって83分から途中出場し、ニアへ飛び込んでいた笹修大はある行動を起こしている。
「相手ディフェンスの前でボールに触りたいので、次はひとつ前に入る、という話をしました」
こう振り返った笹が耳打ちした相手は金子。言葉に込めた意図を笹は次のように明かしている。
「ベンチで見ていて、クロスからの攻撃が有効になる、というイメージがありました。実際に(金子)拓郎くんからいいクロスが何本もあがっていましたけど、相手に弾かれてしまうシーンが多かった。
押し込んでも点を取れないときは、一列後ろから入っていけば相手もセットしているなかでボールを待って対応しなければいけなくなる。自分はそういう形からのヘディングを得意にしているので」
浦和の曺貴裁監督も最後となる3度目の選手交代で、笹を3試合ぶりに出場させた意図をこう語る。
「最後は自分が絶対に点を取って…」
「1列目の選手にクロスを上げても、なかなか(相手ゴールを)こじ開けられないのはわかっていました。そのなかで2列目から入っていく選手としては、彼(笹)が一番適任だと思いました」
笹が投入された83分の時点で、浦和のシステムはキックオフ時の<3-4-2-1>から、ともに途中出場の肥田野蓮治とオナイウ阿道の両FWを2トップとする<3-4-1-2>へと変わっていた。
そのなかで瀬古樹とダブルボランチを組んだ笹は、こんな青写真を脳裏に描いていた。
「自分が入ったときはダブルボランチでしたけど、(瀬古)樹くんにバランスを取ってもらって、自分がどんどん相手ゴール前に入っていこう、最後は自分が絶対に点を取ってねじ伏せてやろう、と」
笹の熱い思いは長沼の決定機がスウォビィクにセーブされた直後の94分に具現化される。後半アディショナルタイムが表示された4分台に突入した直後の、まさに土壇場で歓喜のシーンが訪れた。
右サイドからDFダニーロ・ボザが放ったクロスが逆サイドへ、さらにボールを拾った早川隼平が放ったクロスも再び逆サイドに流れたなかで、シャドーから右ウイングバックへ変わっていた金子にわたる。
金子が大崎航詩との1対1に臨むなかで、笹はニアからするするとポジションを下げていった。
そして水戸ゴールから離れる方向へボールを運び、大崎をかわした金子が利き足の左足を一閃。しかし、クロスの標的は水戸ゴール前へ詰めていた肥田野やオナイウら5人もの味方選手ではなかった。
やや遅れて相手ゴール前のスペースへ侵入。ほぼフリーの状況から渾身のパワーを込めたヘディング弾を叩きつけるように放った笹が、浦和の計26本目のシュートでスウォビィクの牙城に風穴を開けた。
「今治で無得点でも…」
今夏にJ2のFC今治から加入した笹にとって、出場6試合目で待望のJ1初ゴール。出場した公式戦では7日のRB大宮アルディージャとの天皇杯JFA第106回全日本サッカー選手権大会3回戦、14日の横浜FCとのヤマザキビスケット・ルヴァンカップ1stラウンド3回戦に続くゴールに20歳のホープが胸を張った。
「拓郎くんが本当に素晴らしいボールをくれたので、あとは気持ちで押し込むだけでした」
北海道・札幌大谷高校時代は得点を奪えるボランチとして活躍し、今治加入も勝ち取った。しかし、プロの舞台では昨シーズン、J2・J3百年構想リーグを含めた公式戦で48試合に出場して無得点だった。
だからこそ、今夏に届いた浦和からのオファーを「素直にうれしかったですね」と振り返る。
昨年末に浦和のテクニカルダイレクターに就任した池西希氏が、ギラヴァンツ北九州のゼネラルマネージャー時代から追いかけてきたのが笹だった。縁に導かれたステップアップ。笹はさらにこう続ける。
「今治で無得点でも、プレーの質を見てくれたなかでオファーをいただいた。このチームのファン・サポーターの熱さも知っていましたし、自分のプレーで熱くさせる機会をどんどん作っていきたいと思いました」
今治ではボランチやトップ下に加えて、サイドバックやセンターバックと複数のポジションで常にアグレッシブにプレー。身長181cm・体重79kgの体に宿る可能性に今夏に就任した曺監督も期待を寄せた。
その証がガンバ大阪との今シーズン開幕戦での先発抜擢。渡邊凌磨とのダブルシャドーで敵地のピッチに立った笹は、続くサンフレッチェ広島とのホーム開幕戦でも同じポジションで先発を果たしている。
しかし、浦和はともに4失点で開幕連敗。2戦続けて60分でベンチに下がった笹は、リーグ戦の第3節以降は先発から外れ、途中出場が3、リザーブとベンチ外が2試合ずつという状況で水戸戦を迎えた。
指揮官は「調子が悪かったから使っていないわけではない」としたうえで、笹に対してこう言及した。



