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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。優勝しても批判、セレソンを左右する“フッチボウ・アルチ”の文化(その2)

ブラジルには「フッチボウ・アルチ(芸術サッカー)」という文化がある。ただ勝利するだけでは不満で、美しい攻撃が要求される。それを体現したのが70年W杯のセレソンだった。中心選手、カルロス・アルベルト・トーレスを軸にブラジル独自の文化に迫る。

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Getty Images , Sachiyuki Nishiyama

本物の「伝説」カルロス・アルベルト

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カルロス・アルベルト・トーレス【写真:Sachiyuki Nishiyama】

 ブラジル人が愛するフッチボウ・アルチの原型と言える、70年W杯ブラジル代表――。そのキャプテンだったのが、カルロス・アルベルト・トーレスだ。

 彼がこの大会、イタリア戦で右サイドから決めた強烈なミドルシュートは、W杯史上で最も美しい得点の一つだろう。ペレが選んだ20世紀125人の名選手の一人でもある。

 日本のサッカー愛好者にとっては、かつて名古屋グランパスにいた「トーレス」の父親と記した方が親しみが湧くかもしれない。

 トーレスはJリーグの草創期に在籍した、視野が広い、足技の巧みなボランチだった。グランパスの成績が冴えなかったこと、そして他に大物外国人選手が多数在籍したため注目度は低かったが、彼の力はもっと評価されてもよい。

 話を父親のカルロス・アルベルトに戻す。

 カルロス・アルベルトは1944年7月17日、リオ・デ・ジャネイロで産まれた。

 地元リオの名門クラブ、フルミネンセから66年にサントスFCへ移籍、その後、再びフルミネンセ、フラメンゴ、ニューヨーク・コスモスなどでプレーしている。現役引退後は、フラメンゴ、コリンチャンスなどでも監督を務めた。

 今回のW杯ブラジル大会ではロナウドやベベット、マリオ・ザガロなどと共にアンバサダーとなっている。日本ではレジェンドという言葉が安易に使われがちであるが、カルロス・アルベルトは本物の「伝説」である。

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