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ブルーノ・フェルナンデスは「赤い悪魔の王様」。マンUの怖さを引き上げる、“人を動かす”能力とは?

プレミアリーグ第27節、マンチェスター・ユナイテッド対ワトフォードが現地時間23日に行われ、3-0でホームチームが勝利している。前半はやや苦戦を強いられたユナイテッドだったが、90分間を終えてみれば3得点快勝。その中で躍動したのは冬に加入したブルーノ・フェルナンデスだった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

3得点快勝で5位浮上

マンチェスター・ユナイテッド
【写真:Getty Images】

 第25節のウォルバーハンプトン戦で0-0、第26節のチェルシー戦で2-0と、ここ最近のマンチェスター・ユナイテッドはリーグ戦で強豪相手に粘り強い戦いを見せることができている。順位も大きく回復し、一時は不可能とも思われたチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内も十分射程範囲内にある。

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 そんなユナイテッドは、現地時間23日に行われたプレミアリーグ第27節、ワトフォード戦でも勝利を挙げた。最終スコアは3-0。シュート数21本、被シュート数7本、支配率58%と、大きな差が付く試合となった。

 ただ、ユナイテッドは立ち上がりから何もかもがうまくいっていたわけではない。開始3分にはDFハリー・マグワイアとMFネマニャ・マティッチが自陣深い位置で“お見合い”をしてしまい、FWトロイ・ディーニーに決定機を作られるなど、なかなかエンジンがかからなかった。先発復帰を果たしたDFヴィクトル・リンデロフもコンディションの影響からか低調なパフォーマンスが目立っていたなど、特に守備面で不安が大きかった。

 ワトフォードも想像していた以上に前からプレスをかけてきており、ユナイテッドは低い位置からのビルドアップを阻止された。12分にはカウンターから瞬間的に3バックの状態での対応を余儀なくされ、MFアブドゥラエ・ドゥクレにチャンスを作られてもいる。試合の入りはワトフォードが上回っていたと言えるだろう。

 ただ、降格圏に沈むワトフォードもその後はギアが上がらず、前半はお互いにペースを掴めないまま時間だけが流れていった。40分にMFブルーノ・フェルナンデスがGKベン・フォスターに倒されPKを獲得し、これをポルトガル人MFが成功させたことでユナイテッドは先制に成功したが、どこかスッキリしない前半45分間であったことは間違いなかった。

 ただ、後半で流れは一気にホームチームに傾く。51分にCKの流れからワトフォードにゴールネットを揺らされるものの、直前にDFクレイグ・ドーソンにハンドがあったとしてこれが取り消されると、その7分後にFWアントニー・マルシャルがゴール。運も味方につけ、ユナイテッドがリードを広げた。

 ホームチームにとって大きかったのが、ワトフォードに反撃を許す前に追加点を挙げることができたこと。これで精神的に相手チームを砕いたといっても過言ではなかった。ワトフォードからすれば、直前に自分たちのゴールが取り消され反対に点を奪われたのだから、それも無理はない。

 そして74分にはFWメイソン・グリーンウッドがトドメの3点目を奪取。勝負は完全に決まった。その後、無失点で試合をクローズしたユナイテッドが2連勝。5位に浮上している。

 クラブ公式サイトによると、試合後オーレ・グンナー・スールシャール監督は「とても良い形での勝利。(チェルシー戦と)2試合続けて良い勝ち方ができて、無失点だ。前半は相手にチャンスを作らせてしまったが、徐々に決定機を作れたね」とコメントしていたという。こういった試合で勝ち点を落とし続けていたこれまでのユナイテッドだったが、しっかりと白星を奪えたのは大きな自信に繋がるのではないだろうか。

“人を動かす”背番号18の能力

ブルーノ・フェルナンデス
【写真:Getty Images】

 そして、スールシャール監督は試合後に「彼はフットボールをプレーするのが大好きでボールをいつも欲しがる。どんな時でも要求でき、PKキッカーも希望する選手だ。彼がマンチェスター・ユナイテッド気質の持ち主ということがわかるね」とある選手に対し称賛を送っていたという。その選手こそ、MFブルーノ・フェルナンデスだ。

 今冬の移籍市場における最高額の移籍金で名門に加わったポルトガル人MFは、新天地でも大きく躍動。このワトフォード戦でも1ゴール2アシストと全得点に絡む活躍を見せ、チームを勝利に導いている。

 先制ゴールの場面では、味方に縦パスが入った瞬間に相手のラインと自分の位置を調整し、オフサイドにかからないよう意識。ボールに触れるタイミングも抜群で、GKフォスターのファウルを誘発するなど“らしさ”を見せた。

 そして、マルシャルとグリーンウッドのゴールを演出。もちろん、シュートを放った選手の技術も高かったのは事実だが、B・フェルナンデスはそれだけチャンスシーンに絡めていたという何よりの証拠でもある。シュート数3本、ドリブル成功数3回、決定的なパス4本と、ワトフォード戦のデータでもポルトガル人MFの攻撃面での存在感が表れている。

 B・フェルナンデスは視野が抜群に広く、ボールを受ける直前に周りの状況を確認できているので、次の動きに移るまでが非常にスムーズだ。全体的な動きに無駄がなく、単純な足の速さとは別な「スピード」を感じることができる。

 人が動いたタイミングを見逃さず、そこに通すパスの精度も非常に高いのだが、その特徴こそ “人を動かす”ということにも繋がってくる。単純にスペースへボールを確実に通してくれるので、自然に周りの選手の動きも活発になるのだ。こういった選手の加入は非常に大きいと言えるだろう。

 過去にMFフレンキー・デ・ヨングは「(リオネル・)メッシとプレーするのは簡単だ。彼はスペースに見事なボールを送ってくれるからね」とコメントしていたが、まさにB・フェルナンデスは「ボールを送ってくれる」人だ。「動けばパスをくれる」という意識は、間接的にゴールへの可能性をも引き上げる。MFポール・ポグバが不在でチャンスをクリエイトできる選手が不在だったユナイテッドからすると、背番号18はまさに理想的な選手であったと言えるだろう。

 前所属のスポルティングCPではゴールやアシストを量産するなど、まさに「王様」であったB・フェルナンデス。ユナイテッド加入当初は「合わないのでは?」といった批判的な声もあったが、今では「赤い悪魔の王」にもなりつつある。

(文:小澤祐作)

【了】

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