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リバプールが機能不全に陥った理由。連勝ストップ最大の危機、逆転勝利の契機となった選手交代

プレミアリーグ第27節、リバプール対ウェストハムが現地時間24日に行われ、3-2でリバプールが勝利を収めた。生命線ともいえる武器が影を潜めたリバプールは、下位のウェストハムに大苦戦。連勝ストップの危機が迫る中で逆転の契機となったのは、アレックス・オックスレイド=チェンバレンの投入だった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

リバプール苦戦の原因

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【写真:Getty Images】

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16・1stレグでアトレティコ・マドリーに敗れてから中5日。ホームにウェストハムを迎えたこの試合は、無敗を継続する今季のプレミアリーグで、リバプールが最も苦しんだ試合の一つだったと言えるだろう。

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 あまりにも早い時間帯に先制点が入ると試合運びが難しくなるのは、昨季のCLファイナルを制したリバプールが一番よく分かっていたはずだ。18日の試合では、CKからサウール・ニゲスが押し込んで4分に先制したアトレティコ・マドリーがその1点を守り抜いた。

 ウェストハム戦では反対に、リバプールが9分という早い時間に先制に成功した。トレント・アレクサンダー=アーノルドのクロスを、ジョルジニオ・ワイナルドゥムがヘディングで合わせる。ウカシュ・ファビアンスキは腕を伸ばして当てたが、ボールはゴールネットへと吸い込まれた。

 しかし、12分にロバート・スノッドグラスの右CKをニアでイサ・ディオプが合わせて同点。直近11試合で1失点しか許していないリバプールが、すぐに同点に追いつかれてしまった。

 前半のリバプールは、持ち前のセカンドボール回収に苦戦した。73.2%のボール保持率を記録し、12本のシュートを放っているが、先制点以外の決定機は少なかった。ボールロストからカウンターを受ける場面も多く、攻撃は断続的なものとなった。

「(セカンドボールとセットプレーの)両方ともに今夜はよくなかった」とユルゲン・クロップの試合後のコメントをリバプール公式サイトは伝えている。ウェストハムはセカンドボールの回収で優位に立ち、カウンターから攻撃につなげる。前半だけで6本のCKを獲得し、そのうち1本をゴールへとつなげた。

チェンバレン投入が反撃の契機

「2点目を決められてから私たちは自身を取り戻した」と、指揮官は試合後に英メディア『BBC』に語っている。54分に途中投入されたパブロ・フォルナルスのゴールで逆転されたリバプールは、モハメド・サラーとサディオ・マネのゴールで再逆転に成功した。

 試合の流れを変えたのは、アレックス・オックスレイド=チェンバレンだった。逆転を許した直後の57分にナビ・ケイタに代わって投入されると、さっそくボックス外からミドルシュートを放った。チェンバレンがピッチに入ることで、リバプールはチームのアイデンティティともいえるダイナミックさを取り戻した。

 68分の同点ゴールは、アンドリュー・ロバートソンのクロスをサラーが左足で合わせた。シュートはGKの正面を突いたがファビアンスキはキャッチできず、股を抜けてゴールへ収まった。それまでは好セーブを見せていた守護神が、このシーンだけ大きなミスを犯してしまった。

 81分の逆転ゴールは相手のリフレクションから生まれた。相手のクリアボールを拾ったジョー・ゴメスのミドルシュートは相手に当たる。このこぼれ球にアレクサンダー=アーノルドが反応してゴール前に浮き球のパスを送ると、ゴール前に走り込んだマネがゴールに流し込んだ。

「我々のゴールはすべて不思議なものだった」と指揮官が振り返る通り、2つのゴールは相手のミスや、幸運が絡んだゴールだった。しかし、チェンバレンの投入でチームは積極性が増し、ダイレクトなプレーは増えた。これが相手の隙を生み、決定機へとつながったことは明らかだった。

敗戦は致命傷になりかねない

 この試合で2つのアシストをマークしたアレクサンダー=アーノルドは、早くも昨季の12アシストに並んでいる。データサイト『Who Scored』によれば、DFとして驚異的なペースでアシストを量産する21歳はこの日も6本のキーパスを記録している。

 左のロバートソンも6本のキーパスを記録し、68分の同点ゴールをお膳立てしている。彼らの攻撃性能の高さは今更言うまでもないが、両サイドバックの攻め上がりに相手の両サイドは疲弊し、次第に足が止まっていった。

 リバプールはプレミアリーグの連勝を18まで伸ばし、マンチェスター・シティが持つ記録に並んだ。無敗記録や連勝記録が多すぎて、どれがどれだかわからなくなる。ただ、この1週間で分かったことは、相手の調子や実力に関わらず、自分たちの良さが出せなければ勝つことは難しいことと、ホームの大歓声は12番目の選手になり得るということ。

 先日敗れたアトレティコも国内では苦戦が続いていたが、ワンダ・メトロポリターノの大歓声を受けた選手たちはリバプールよりも5km以上多く走り、先制点を守り抜いている。この試合でもウェストハムの豊富な運動量がホームチームを苦しめたが、時間の経過とともにリバプールが勢いで上回っていった。

 それでもこの試合に勝てたことは大きい。敗戦のショックは荒療治になるが、続けて敗れるとその傷は致命傷になりかねない。ジョーダン・ヘンダーソンという唯一無二のキャラクターを欠くチームが、劣勢を跳ね返して勝利を掴んだことをポジティブに捉えるべきだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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