浦和レッズの長沼洋一【写真:Getty Images】
田中達也監督のもとで再出発した浦和レッズは、連敗を止めた一戦で確かな変化を示した。その中心にいたのが長沼洋一だ。左SBながら“ピン留め役”として高い位置を取り続け、攻守における役割を明確に体現。「立ち位置の整理」と「全体での共有」がもたらした手応えを、本人の言葉とともにひも解く。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンド第13節
浦和レッズ 2-0 川崎フロンターレ
埼玉スタジアム2002
田中達也監督がもたらした変化

川崎フロンターレ戦で指揮を執った田中達也暫定監督【写真:Getty Images】
浦和レッズは監督交代という大きな転換点を迎え、暫定的にチームを託された田中達也監督のもとで臨んだ一戦で、川崎フロンターレに2-0と勝利。PK戦を含む連敗を「7」で止め、3月7日以来となる白星を手にした。
この結果は単なる勝敗以上に、ピッチ上の構造整理と役割の明確化がもたらした必然的な帰結と捉えることができる。
田中監督が短期間で整備したのは、ビルドアップの安定と前線の幅確保を両立させる配置である。
後方は3枚でボールを動かし、中盤に2枚を置きながら前線は5レーンを埋める[3-2-5]を基調とした。
この中で機能的な変化を象徴したのが、左サイドバック(SB)に入った長沼洋一の役割だった。
最終ラインの一角として守備的に振る舞うのではなく、高い位置で幅を取り続ける“ピン留め役”として振る舞い、実質的にはウイング(WG)としてプレーする設計である。
長沼自身も、その整理された役割がもたらした効果を明確に言語化する。
浦和レッズが「ボールを持つ時間が長かった」要因

ボールを保持する浦和レッズ【写真:Getty Images】
「立ち位置を分かりやすくしたっていうのも1つの要因ですし、あとはボールをしっかり握れたというのが良かったと思います。奪われた後の切り替えもすごい早かったので、自分たちがボールを持つ時間が長かった」
ポゼッションの安定は、単にボールを保持した結果ではなく、立ち位置の整理によってパスコースと判断基準が明確化されたことに起因する。
ビルドアップの局面では、ボランチが最終ラインに落ちるのではなく、最終ラインがスライドすることで3枚を形成し、右の石原広教が低い位置に残る非対称構造が採用された。
これにより左の長沼は一貫して高い位置を維持できる。
「ああいう立ち位置を取ろうと言われてましたし、俺と(マテウス・)サヴィオのどっちがどっちでもいいと言われてましたけど、基本的に俺がピン留めするみたいな」
この固定された幅が相手最終ラインを押し広げ、ハーフスペースの活用を容易にした。
さらに、相手のプレッシングに応じた可変も組み込まれている。
「相手のプレッシングを見ながら、WGが出てきたら、その背後のポケットを使おうというのは言っていた」
単純な外張りではなく、背後へのランニングも織り交ぜることで、相手守備に対して多層的な脅威を与えていた。
「メリットとデメリットをちゃんとみんなで…」

浦和レッズの金子拓郎【写真:Getty Images】
「(パスが)通るシーンはあまりなかったけど、背後のランというのは意識してやりました」と語るように、実際のボール関与以上にラインコントロールに影響を及ぼしている。
一方で、この配置は守備時のリスクも伴う。長沼が高い位置を取ることで左サイドの背後にはスペースが生まれるが、その管理はチーム全体で共有されていた。
「俺が空けた穴は(安居)海渡がうまく埋めてくれたり、メリットとデメリットをちゃんとみんなで共有していた」
個々の判断ではなく、構造としてカバーリングが組み込まれていたことで、川崎のカウンターは抑制された。
攻撃局面では、右の金子拓郎と長沼が同時に幅を取り、最終ラインに対して横幅の最大化を強いる形が機能した。
「SBというよりWG。右の拓郎と俺が幅をとって、最終ラインと駆け引きする」
この配置により中央にスペースが生まれ、マテウス・サヴィオや中島翔哉が前向きで関与できる状況が増加した。
「拓郎から俺にというシーンは多く出たのかな」という言葉が示す通り、サイド間の展開も円滑で、相手守備のスライドを遅らせる効果もあった。
守備への切り替えにおいても役割は明確だった。
攻撃は実質的なWG、しかし守備では本来のSBとして稼働するのはかなりのハードワークになる。