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J1 3時間前

「昨年だったらできていたのかな」サンフレッチェ広島、鈴木章斗がもがく中で見つめ直した原点。「それを忘れずにやれば…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 フリーライター photo by Getty Images
サンフレッチェ広島の鈴木章斗
サンフレッチェ広島の鈴木章斗【写真:Getty Images】



 今季湘南ベルマーレから鳴り物入りで加入し、サンフレッチェ広島で背番号「10」を背負う鈴木章斗。得点が伸び悩む中で迎えた一戦で、もがきながらも途中出場で結果を残し、チームに貴重な先制点を呼び込むアシストを記録した。苦しみの中でも前を向き続ける姿勢で、確かな存在感を示し始めている。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]

明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンドWEST第16節
ガンバ大阪 0-1 サンフレッチェ広島
パナソニックスタジアム吹田

進化が問われる一戦となったサンフレッチェ広島

サンフレッチェ広島のバルトシュ・ガウル監督
サンフレッチェ広島のバルトシュ・ガウル監督【写真:Getty Images】

 2026シーズンからドイツ人のバルトシュ・ガウル監督体制に移行し、ボールをつなぎながら攻撃を仕掛けるスタイルを推し進めているサンフレッチェ広島。明治安田J1百年構想リーグでは優勝候補の一角にも挙げられたが、想像以上の苦戦を強いられ、WEST地区中位で最終盤を迎えつつある。

 大型連休の連戦ラストとなる第16節の相手はガンバ大阪。相手は1週間後の16日にAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)のファイナル、アル・ナスル戦を控えており、同じドイツ人監督のイェンス・ヴィッシングが今季から指揮を執るチームだ。

 ガンバの方がより縦に速いサッカーを志向しているが、ガウル監督としても絶対に負けられないと闘志を燃やしていたに違いない。

 この日は最前線に木下康介、シャドウに加藤陸次樹と中村草太を起用。ボランチには体調不良から復帰したばかりの松本泰志、コンディション不良の中島洋太朗らに代わって新井直人を抜擢した。


 
 これは1つのサプライズだったが、「直人は技術が高く、戦術理解度にも優れており、守備でのアグレッシブさも持っているため、ボランチの役割を高い質でこなせると確信して起用した」と指揮官は説明した。

 序盤は一進一退の攻防が続いたが、広島は22分の新井のシュート、26分の中野就斗のビッグチャンスなど、得点の匂いを感じさせるシーンを作る。

 逆にガンバにも決定機を作られるが、守護神の大迫敬介を中心に守り切り、0−0で前半を折り返した。

「初めは何気なく結果が出ていましたけど…」

サンフレッチェ広島FW鈴木 章斗
サンフレッチェ広島の鈴木 章斗【写真:Getty Images】

 後半に入るとガンバは南野遥海を投入して攻撃のギアアップを図った。

 それに負けじと広島も56分に加藤、木下を下げて、ジャーメイン良と鈴木章斗を投入。貪欲にゴールを狙いにいった。

 今季から広島の背番号「10」を背負う鈴木は、直近2試合、ベンチスタートが続いていた。

 湘南ベルマーレから鳴り物入りで加入し、開幕前は「絶対的エースになる」と期待された。

 2月6日のV・ファーレン長崎との開幕戦では早速1ゴールを奪ったが、そこから思うように得点数が伸びず、ここまで3点にとどまっている。

「初めは何気なく結果が出ていましたけど、あまり噛み合っていないとは思っていた。その分、自分が甘かったと感じます。そこからスタメンで出られなくなり、出てもあまり結果を残せない状況が続いているので、自分としてもすごく難しさを感じています。



 そこで考えたのは、『もう1回、しっかり守備からやろう』ということ。自分の持ち味を生かせるようなプレーをしていきたいと思ったんです。

 自分には湘南時代からやってきたハードワークがある。それを忘れずにやれば、自然といいリズムになるんじゃないかと。そういう意識で取り組もうとしています」

 そう語った彼は、新天地でもがきながらも、やるべきことを明確に見据えて、ピッチに立っているという。

 その姿勢は確かに出ていた。前へ前へボールを取りに行く意識を押し出しながらプレーした。

 こうしたアグレッシブさと献身性が値千金の先制点を呼び込んだのだろう。

 迎えた68分、自陣で中野が食野亮太郎からボールを奪い、ジャーメインにつないだところからがスタートだった。

「なんかイケそうだなと…」

サンフレッチェ広島、東俊希
先制点を記録したサンフレッチェ広島の東俊希【写真:Getty Images】

 ジャーメインはいったん中野に預けてインサイドを持ち上がり、鋭い裏抜けを見せた鈴木にスルーパスを出した。

 背番号「10」は中谷進之介と三浦弦太の間に侵入。三浦にカットされたかと思いきや、右足を強引に伸ばしてボールを後ろに流し、フリーで飛び込んできた東俊希にパス。これを東が流し込み、先制に成功したのだ。

「相手DFが自分に体を入れるのにちょっと緩さを感じたんで、『なんかイケそうだな』と。後ろに俊希君がいるのは分からなかったんですけど、とりあえずそこに残したら何かが起きるんじゃないかというふうには思ったので、その一瞬のスキを突けたのがすごくよかったですね」と本人も安堵感を吐露した。



 ガンバという相手は、鈴木にとっては特別だ。

 というのも、彼はガンバのジュニアユース出身である。ユースに上がれず阪南大高校に進み、そこから湘南でプロになったのだ。

 パナソニックスタジアム吹田というのは、中学時代の鈴木が「いつか自分がそこで活躍したい」と思い描いていた場所に違いない。

 そこで広島を勝たせるアシストをしてみせたのだから、大きな自信と手ごたえをつかめたはずである。

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