
ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオール【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループC第1節・ブラジル代表vsモロッコ代表が現地時間13日に行われ、1-1の引き分けに終わった。優勝を狙うセレソンにとって勝ち点「1」の獲得は決して悪い結果ではない。しかし、内容面で多くの課題が露呈したのも事実だ。すでに「史上最弱」という声も挙がっているが、筆者はまだ彼らが立て直す可能性を十分に残していると考えている。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
注目の対決は1-1のドロー
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「スタートはあまり良くなかったと思う」
カルロ・アンチェロッティ監督が試合直後のフラッシュインタビューで語ったこの一言に、この日のブラジル代表のパフォーマンスが凝縮されている。
W杯史上最多優勝を誇るセレソンは、完全に出鼻をくじかれた。
モロッコ代表の積極的なハイプレスとカウンタープレスの鋭さに後手を踏み、最終ラインからボールを前進させられなかった。何度もショートカウンターを浴び、11分までに6本のシュートを打たれている。
21分にはブライム・ディアスのスルーパスに反応したイスマエル・サイバリに抜け出されて失点。マルキーニョスとガブリエウ・マガリャンイスの両CBの間を割られるという、印象の悪い失点だった。
32分にヴィニシウス・ジュニオールの得点で同点に追いつき、試合も引き分けに終わったものの、前半のパフォーマンスレベルの低さから印象はあまり良くない。
今大会に向けたブラジル代表には「史上最弱」という言葉が付きまとっている。予選も5位で通過しており、ブラジル国民の期待値が高くないのも事実だ。
しかし、今のブラジル代表を「最弱」と断言するにはまだ早いだろう。
今大会における初戦の意義
全体的に動きが鈍く、モロッコ代表の選手たちと比べても明らかにコンディションが上がり切っていない点は気になった。
MFブルーノ・ギマランイスのような展開力に優れた選手のサイドチェンジが大きくずれた場面や、失点シーンにおけるガブリエウ・マガリャンイスの中途半端な対応を見る限り、好調時と比べてプレー精度や判断力を欠いていたことは明らかだった。
ただ、忘れてはならないのは、この試合がブラジル代表にとってW杯の初戦だったということだ。
モロッコ代表は今大会屈指の完成度を誇るチームであり、グループ最大のライバルとの初戦で課題が見つかったことは決して悪いことではない。
仮に決勝トーナメント以降でこのパフォーマンスであれば問題だが、3位以上のチームの大半が決勝トーナメントへ進出できるレギュレーションにおいて、ピークを開幕戦に持ってくる理由はない。
むしろW杯で勝ち上がるチームは、大会の途中から大きくギアを上げられたチームである。
前回大会のアルゼンチン代表や、2010年大会王者のスペイン代表も初戦で敗れている。大会途中に修正できる能力があれば、上位進出の可能性は十分にある。
その点において、アンチェロッティ以上に信頼できる指導者はそう多くないだろう。実際、後半のパフォーマンスには改善の兆しが見えた。
アンチェロッティ監督の修正能力

ブラジル代表のカルロ・アンチェロッティ監督【写真:Getty Images】
経験豊富なイタリア人指揮官は、ブラジル代表の最適解を見つけるために様々なオプションを試している。
今年3月の2試合とW杯直前の2試合、計4試合の強化試合では、予選から大胆にメンバーを変更した影響もあり、[4-4-2]、[4-2-3-1]、[4-3-3]、[3-2-4-1]と全試合で異なるシステムを採用した。
こうした柔軟性は、モロッコ戦の前半と後半で大きく印象が変わる試合内容になったことからも見て取れる。
アンチェロッティ監督は前半終了時点で警告を受けていたMFカゼミーロと、ウェズレイの負傷に伴い右SBに抜擢されていたDFロジェール・イバニェスをベンチへ下げた。
代わって投入されたMFファビーニョとDFダニーロの両ベテランは、前半にプレーした選手たちと比べて安定したパフォーマンスを披露した。
後半途中に投入されたFWマテウス・クーニャとFWルイス・エンヒキも、チームに新たな変化をもたらした。
特に印象的だったのが、クーニャが入ったことで生まれた流動性だ。

