
チュニジア代表監督に就任したエルヴェ・ルナール【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループリーグ第2節で日本と対戦するチュニジア代表に激震が走った。初戦のスウェーデン代表戦で1-5の大敗を喫した直後、サブリ・ラムシ監督の解任を発表。後任にはアフリカサッカー界を代表する名将、エルヴェ・ルナール監督を招聘した。異例の決断は、日本にどのような影響をもたらすのか。(文:河治良幸)[1/2ページ]
異例の監督交代に踏み切ったチュニジア代表

元チュニジア代表監督のサブリ・ラムシ【写真:Getty Images】
日本代表がグループリーグ第2戦で対戦するチュニジア代表に、大会期間中としては異例の激震が走った。
初戦のスウェーデン代表戦で1-5の大敗を喫した直後、チュニジアサッカー連盟はサブリ・ラムシ監督の解任を決断。そして後任として招聘したのが、アフリカサッカー界を代表する名将として知られるフランス人のエルヴェ・ルナール監督だった。
日本戦まで残された時間はわずか5日。戦術を一から作り上げる余裕はない。それでもチュニジア代表が監督交代という荒療治に踏み切った背景には、このフランス人指揮官に対する強い期待がある。
もっとも、今回の監督交代は単純にスウェーデン代表戦で敗れたことだけが理由ではない。
チュニジア代表は2026年初頭のアフリカネイションズカップで期待を裏切る結果に終わり、サミ・トラベルシ監督を解任。その後任として今年1月に就任したのがラムシ監督だった。
元チュニジア代表でもあるラムシ監督は、ワールドカップ(W杯)開幕まで半年足らずという難しいタイミングでチーム再建を託された。
限られた準備期間の中で本大会へ向けた強化を進めてきたが、連盟が特に求めていたのは守備組織の立て直しだった。
守備再建を期待も…

初戦のスウェーデン代表戦に大敗したチュニジア代表【写真:Getty Images】
チュニジア代表は伝統的に組織的な守備を武器としてきたが、近年は守備の安定感に陰りが見え始めていた。グループリーグ突破を目指す上でも、まずは失点を減らすことが最優先課題と考えられていた。しかし、チームの状況は改善されなかった。
大会前のベルギーとの強化試合では0-5で敗戦。そして迎えたW杯初戦のスウェーデン代表戦でも守備ブロックが機能せず、最終的には1-5という屈辱的なスコアで敗れた。
チュニジアサッカー連盟にとって問題だったのは敗戦そのものではない。守備再建を期待して招いた監督の下で、ベルギー代表戦とスウェーデン代表戦という重要な試合で合計10失点を喫したことだった。
もし0-1や1-2の惜敗であれば継続もあり得たかもしれない。しかし、最も改善されるべきだった守備面で再び崩壊を露呈したことで、連盟はグループリーグ突破への望みをつなぐために決断を下した。
そこで白羽の矢が立ったのがルナール監督だった。
国際舞台で実績を重ねてきた名将

エルヴェ・ルナール監督【写真:Getty Images】
アフリカサッカーを語る上で欠かせない存在である。ザンビア代表とコートジボワール代表を率いてアフリカネイションズカップを制覇。2018年ロシアW杯ではモロッコ代表を本大会へ導き、国際舞台で確かな実績を積み上げてきた。
そして世界中にその名を知らしめたのが2022年カタールW杯だった。
サウジアラビア代表を率いたルナール監督は、後に優勝するアルゼンチン代表を2-1で撃破。大会最大級の番狂わせを演出し、「短期決戦の名将」としての評価を不動のものにした。チュニジア連盟が今回求めたのも、まさにその能力だった。
残された時間は少ない。新たな戦術を浸透させることは難しい。
しかしルナール監督には、短期間でチームの規律を整え、選手たちの精神状態を立て直す力があると考えられている。興味深いのは、ルナール監督自身もまた波乱の立場に置かれていたことだ。
カタールW杯後にフランス女子代表を率いた後、2024年にサウジアラビア代表へ復帰。翌年3月にはアウェイで日本と対戦し、スコアレスドローに持ち込んでいる。そこから本大会出場に導いたが、今年4月、本大会開幕を約2か月後に控えたタイミングで突然解任されていた。
本来であれば今大会を外から見守る立場だった指揮官が、今度はチュニジア代表を率いてW杯へ戻ってくることになったのである。
言い換えれば、日本が対戦するのは単なる新監督ではない。サウジアラビアで志半ばにして職を追われた名将が、自らの価値を再び証明しようとしている状況でもある。