
サンフレッチェ広島 鈴木章斗【写真:Getty Images】
新天地で壁にぶつかった半年間は、鈴木章斗にとって決して遠回りではなかった。自らの武器を見つめ直し、指揮官の要求に応え続けた先で、今季は背番号10として攻撃をけん引。浦和レッズ戦で奪った2ゴールには、湘南ベルマーレ時代から積み重ねてきた成長の跡が凝縮されていた。日本代表、そしてその先にある2030年ワールドカップ(W杯)へ。23歳のストライカーが、新たなステージへ踏み出している。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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明治安田J1リーグ第2節
浦和レッズ 1-4 サンフレッチェ広島
埼玉スタジアム2002
鈴木章斗が開幕2戦で早くも示した得点力

チームメイトからゴールを祝福されるサンフレッチェ広島の鈴木章斗【写真:Getty Images】
明治安田J1百年構想リーグから、ドイツ出身のバルトシュ・ガウル監督率いる新体制へと移行しているサンフレッチェ広島。同リーグはWEST4位・最終順位7位となり、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を逃したが、逆に言えば、26/27シーズンは国内タイトルに集中できるというメリットが生まれたことになる。
「ACLは移動がきついので、それがない分、リーグ戦で行けるところまで行きたいなと思っています」と37歳のベテラン・塩谷司も話していたが、新シーズンの広島は2015年以来のJ1制覇に突き進む構えだ。
それだけの底力を色濃く示したのが、8月15日の第2節・浦和レッズ戦だった。1週間前の8日の開幕・ジェフユナイテッド千葉戦を3−0で勝利し、勢いに乗った彼らは敵地・埼玉スタジアムで完成度の違いを見せつけたのだ。
序盤から攻守両面で浦和を圧倒すると、前半に2点、後半にも2点を奪って4−1で勝利。シュート数に目を向けると19対2という大差で敵を凌駕し、2試合を終えて2位につけている。そのけん引役となったのが、開始15分の先制点と75分の4点目を叩き出した背番号10・鈴木章斗である。
最初のゴールは最終ラインからのビルドアップが発端だった。佐々木翔が強力新助っ人FWセバスティアン・アレーを経由して、右の中野就斗へボールが渡ると、ボランチ・川辺駿が一目散に前線へ。ペナルティエリア右側から逆サイドに展開し、そこに飛び込んだのが鈴木だ。
次の瞬間、彼が左足で豪快なボレー弾を叩き込み、スケールの大きな点取り屋であることをアピールしたのだ。
「枠に入れることだけを…」

サンフレッチェ広島 鈴木章斗【写真:Getty Images】
「今日はクロスっていうところを(監督から)多く言われていた。必ずいいボールが来るなと思っていたので、あとは枠に入れることだけを意識していました」と本人は冷静に判断してフィニッシュしたことを明かす。
2つ目のゴールは左サイド・新井直人のスローインから。それが右の大外の塩谷に渡った瞬間、左から右に斜めの動きを見せ、マークしていた宮本優太を一気にかわし、右足を一閃。「自分の感覚的にニアのところはチャレンジというか、行ってみようという頭になりました」と鈴木はストライカーらしい嗅覚を発動したという。
これ以外にも、東俊希から受けた57分の決定機などもあり、浦和戦だけでハットトリックを達成していてもおかしくなかった。これで早くも2戦3発。ロケットスタートを見せている状況だが、本人は「毎年、(シーズン)3点目は早い段階で取れるんですけど、4点目が遠いので、どれだけ早く決めれるか意識したいです」と苦笑していた。
ただ、広島で本格的なシーズンを迎えた今季は、その壁を軽々と越えていきそうな予感も漂う。というのも、鈴木はこの半年間でガウル監督のサッカースタイルをしっかりと理解し、実践できるようになっているからだ。
2022〜25年まで4年間過ごした湘南ベルマーレを離れ、広島入りした当初は「何気なく結果が出ていた」と言うが、百年構想リーグの得点数は5。爆発的な得点量産は叶わなかった。
新天地でぶつかった壁「そこは甘かったと…」

サンフレッチェ広島 鈴木章斗【写真:Getty Images】
「(百年構想リーグは)正直、噛み合っていないという感覚がある中で最初、結果が出ただけ。そこは甘かったと思います。その後、徐々にスタメンでも出れなくなり、かなり難しさを感じました」と本人はシーズン途中の5月に本音を吐露していた。
新天地で壁にぶつかった時、鈴木が立ち返ったのが、湘南で身に着けた守備のハードワークだった。
「『まずは守備から』というのが自分の持ち味。それができれば自然といいリズムになるんじゃないかと思いました。新たな環境に行って、どうしても得点が取りたくて、そこにこだわりすぎていたところがあった。もう1回しっかり守備からやろうと考え、取り組んだんです」
背番号10の献身性が奏功し、百年構想リーグWESTラストの京都サンガF.C.、名古屋グランパスの2戦で連発。いい感触でリーグを終え、今季につなげることができた。
そして迎えた26/27シーズン。ジャーメイン良、木下康介(ともに清水エスパルス)、中村草太(ル・アーヴル)が移籍し、アレーと浅野拓磨が加わったが、浅野が7月末に長期離脱。さらに前田直輝も開幕の千葉戦でケガをしてしまい、アタッカーの陣容が手薄になってしまった。
そこでガウル監督は鈴木を一列下げてシャドーで起用することを決断。彼はそのポジションでも1トップに陣取っている時と同じように、ハードワークと決定力を見せつけた。複数ポジションで高いレベルのパフォーマンスをコンスタントに示し続けていけば、彼自身が目指している日本代表入りもそう遠くはなさそうだ。