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独占インタビュー 西野朗『超攻撃の美学、勝負師の哲学』(前編)【サッカー批評issue 56】

text by 永田淳 photo by Kenzaburo Matsuoka

監督として築き上げた肝となるメソッド

──これまでの監督業で築き上げてきたメソッドの中で、肝となる部分はどこにあると考えていますか?

「選手の力、良いところを引き出したいという思いは強い。個性ってその選手にしかないものだから、それを見抜いてどう引き出すか。自分の理想のスタイルとかやりたいサッカーは確かにある。どんな指導者でも、おそらく攻撃的でスペクタクルなサッカーをということは考えるでしょう。ただ、クラブの監督は代表チームと違う。自分の理想とのギャップを感じながら、所属している選手の良いところを引き出して、チームづくりをしていかなければいけない」

──戦術的なルールを細かく決めて、それを徹底させることでチーム力のアップを図る指導者も多いですが、西野さんはそういうタイプではないと思います。それは選手の可能性を最大限に引き出すことを考えているからでしょうか?

「そういう考えはあるし、サッカーはシステマティックにやることだけで成果が出るスポーツでは絶対になくて、柔軟性とか臨機応変な力が必要になるものだから。意外性、イマジネーション、クリエイティブさがなければいけなくて、それは個人が秘めているもの。それを引き出したい。『こういう状況になったらこの動きをしろ』とか、『オーバーラップした選手は絶対使え』と徹底させる指導者はいるけど、同じ状況でも逆の選択をすることで良いプレーができる瞬間がある。

 監督によっては柔軟性や個人の発想を無視して、『チームとしてこの動き』と考える人もいる。でもサッカーは判断スポーツだから、『こうやれ』と言ったことがやれない状況というのがたくさんある。ガンバの選手にはそういう柔軟性があるからその瞬間にベストの選択ができて、その選択に対して周りも同じ絵、2つ先、3つ先のピクチャーを描くことができた。

 それはエゴではなくて、相手の逆を取っていく動きを2人、3人で共有していくということ。それができれば打開につながる。『決めごと』でやらせて、しかも後ろに重心を置きながらリアクションで戦うというのは下位クラブでのチームづくりのスタートになるかもしれないけど、そこから積み上げていくことが強い組織を作る上で大事だと思っている」

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