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【レスターはなぜ強かったのか?―2】岡崎に支えられた得点王ヴァーディ。“斜め”が生んだ脅威の決定力の秘密

下馬評を覆しプレミアリーグを制したレスター。奇抜ではない戦い方をし、またスター選手不在であるにもかかわらず、彼らはなぜ強かったのか? シンプルななかに隠された緻密な戦術を徹底分析する。(文:コンスタンティン・エッケナー)

データでも証明されたヴァーディの決定力

レスター分析
昨季と今季、ヴァーディの進化。

 レスターが首位に立ち、多くのチームがレスターへの挑戦者となってからも、彼らのボール保持平均率が各段に上がったということはない。フォックス(レスターの愛称)たちは、多くの相手選手を回避するために、一度に多くのスペースを飛び越えるロングボールに重点を置いている。彼らの得意手段も徐々に展開が簡単ではなくなったが、プレスを突き破る攻撃は全てのディフェンスにとって依然として危険な脅威であり続けている。

 データ分析家ダン・アルトマンによる興味深いデータがある。

「レスターはトッテナムと比べると、試合ごとに放つシュートは約25%少ない。しかし、彼らのシュートに対するゴール期待値は、約33%高く、リーグの中で最も高い」(ダン・アルトマン)

 私はMFのカンテこそレスターのサッカーそのものだと思っている。彼はピッチ上で起こるすべてに一役買い、ピッチ全体でアシストに徹していると言っていい。とはいえ、このチームで最もゴールをあげているのはジェイミー・ヴァーディだ。現在24ゴールとリーグ得点王も狙えるこのFWに注目しないわけにはいかない。

 分析家ウィル・グルピナ=モーガンはヴァーディの脅威のゴール期待値を割り出している。

・90分での速攻によるゴール期待値:0.15(過去4シーズンでのプレミアリーグで1番。2番はスターリッジの0.13)。
・90分でのカウンター攻撃によるゴール期待値:0.12(過去4シーズンで2番目の成績。しかし、1位のダニー・イングスは今季ほとんどリバプールで試合に出ていない)
・90分でのオープンプレー(PKを除いたプレー)でのゴール期待値:0.26(過去2シーズンをまとめた数値)
※上記すべては2,700分間以上プレーした選手を調査したもの

 このデータを見ると、レスターが奪い取ったチャンスボールのほとんどはピッチ上で正確にチームメート(主にヴァーディ)につなげられていることが分かる。では、レスターはどのようにしてボールを奪い、堅い守備を破ることができるのか。ある種の戦術的なきっかけがあるに違いない。

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