今シーズンの展望
昨季開幕前、誰も予想だにしなかったプレミアリーグ優勝を成し遂げ、「奇跡のチーム」として称賛を集めたレスター。しかし、そんな奇跡を2年連続で起こせるほどこのリーグは簡単ではない。
小規模クラブが躍進すると漏れなくメガクラブからの草刈り場となるのがフットボール界の常というもので、この夏の移籍市場では“奇跡の立役者”の多くがターゲットとなった。
チーム得点王のジェイミー・ヴァーディー、リーグMVPのリヤド・マフレズはそれぞれアーセナル移籍確実とまでいわれていたが、寸前のところで契約を延長して移籍を阻止。主力の流出はチェルシーへ移籍したエンゴロ・カンテのみに留めた。
しかし、この唯一の穴が非常に大きい。ちょうど1年前は全くの無名だった小兵MFは、無尽蔵のスタミナでピッチを駆け回って相手の攻撃の芽を潰し続け、リーグ優勝における“影のMVP”の呼び声も高かった。
その穴は昨季の冬に獲得したダニエル・アマーティとこの夏の新戦力ナンパリス・メンディが埋めることになるのだが、この2人がどこまでその務めを果たせるかは注目だ。生え抜きで10番のアンディ・キングも候補のひとりだが、今季も出場機会は不透明だ。
補強方針も疑問が残る。これまでクラブ最高額の移籍金はマインツから獲得した岡崎慎司だったのだが、この夏にはメンディ、アフメド・ムサ、イスラム・スリマニと計3回もクラブの移籍金記録を更新した。
これは優勝チームを作り上げた敏腕スカウトのスティーブ・ウォルシュ退団が原因によるものだが、クラブ伝統の補強戦略からの“ブレ”を感じずにはいられない。昨夏は補強に3269万ポンド(約44億1315万円)を費やしたが、今季はちょうど2倍の6588万ポンド(約88億9380万円)を移籍市場に投じている。
もちろん、岡崎の活躍にも期待はかかる。昨季のリーグ5得点という結果は本人も満足しておらず、今季はそれ以上の得点数が求められる。チャンピオンズリーグ(CL)にも出場することで試合数も増えることが予想されるが、いかに継続的に良好なコンディションを整えて試合に出続けられるかが重要となる。
昨季はリーグ王者に輝いたが、岡崎以下、クラウディオ・ラニエリ監督も今季の目標は「残留」を掲げている。それだけに、今季も目の前の試合をひとつひとつこなしていくことが求められる。