良い時間帯は、多くのラインが作り出される
ワンタッチプレーが成功しているかぎり、韓国の素早い寄せも、フィジカルコンタクトの強さも無効だった。日本選手に寄せていこうとする韓国選手は、随所でノッキング状態となり、何度かそれが続くとプレス自体が鈍っていった。
日本がワンタッチパスを駆使して攻撃しているとき、選手のポジションが前後の関係になっている。縦パスが入って、後ろに戻し、今度は斜め前へというふうに、縦、横、斜めと、さまざまな方向に角度のついたパスが回っている。これは、選手のポジショニングが正しいことを意味している。そうでないとワンタッチパスを連続させることはできない。
選手のポジションを横方向に結んで“ライン”とすると、良いプレーをしている時間帯の日本には5本以上のラインがあったはずだ。同時に、香川や長友、あるいは岡崎や内田がタッチラインいっぱいに張って幅を作り、縦方向のラインも多く確保していた。
日本はそれを継続できなかった
こうしたワンタッチパスの条件となるポジショニングをごく自然にできていたのは、日本だけだったと思う。韓国、オーストラリア、ウズベキスタンなども、ときにそうしたプレーをしていたが、ボールタッチの精度も含め、日本が最もハイレベルだった。
ところが、日本はそれを持続できなかった。
韓国戦でも、前半のある時間帯だけ。他のゲームでも、できている時間もあれば、できていない時間もあった。
フィジカルコンディションの不備は、おそらく大きな要因だろう。ただ、それだけが原因なのかどうかは、残念ながらはっきりしなかった。その点でも、今大会への準備不足は残念なのだ。
遠藤保仁や本田圭佑のおかげで、何となく出来ていただけなのか。それとも、スタミナの欠如などから“たまたま”出来ない時間が長くなってしまったのか。それがよくわからないのだ。
メツが言ったように、アジアカップの日本はバルセロナのようにプレーした時間帯があった。しかし、それが持続できなかったので、バルセロナに「アジアの」がついてしまう。