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日本代表 11年前

〔アジアカップ総括〕日本は「アジアのバルセロナ」を超えられるか?【サッカー批評 issue50】

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

清武、香川らの技術ある選手が日本のバルサ化を進めていく?【写真:松岡健三郎】

パスを回し続けるメンタル面のスタミナ不足

 日本選手には、パスを回し続けるメンタル面でのスタミナが、まだないのかもしれないとも感じた。相手に引かれてブロックを作られたときに足が止まってしまう。それは体力面での問題だけではないのかもしれない。

 ワンタッチ中心の緻密なプレーを続けていくのに、疲れてしまっているのではないか。例えば、その点で最もタフだったのは遠藤保仁ではなかったか。遠藤はガンバ大阪で、ずっとボールを支配し続けるゲームに慣れている。相手に引かれて、崩しきれないときにも集中力を落とさずに、ミスをせずに、プレーし続ける。遠藤が際立ってしまうのは、他の選手とメンタル面で差があるのかもしれない。その点でも今回は準備不足を感じた。

 南アフリカW杯で証明したように、日本はブロックを作って守り、耐える能力はかなり高い。そこで集中が切れる心配はあまりない。むしろ、押し気味にゲームを進めているときに課題がある。

マイナス要因を取り除くこと

 シリア戦、カタール戦で10人なったときには見事な試合運びをみせた半面、韓国戦やオーストラリア戦では相手にペースを握られた。このあたりもまだ安定しない。

 アジアカップで勝てたのは、それまでの積み上げがあったからだ。W杯はもちろん、それ以前からのメンバーが残っていて、ベースができていた。ザッケローニ監督に代わってから加わった香川真司や吉田麻也などは、確かに大きな戦力ではあるが、まだ完全に組み込めてはいない。ただ、大会の準備は不足していたものの、チームのベースを継続できていたことは大きかった。

 過去の日本代表は、新しい監督が来て作り替えることから始まっていた。だが、ザッケローニは継続からスタートしている。しかし、継続だけではアジアでは勝ててもコパ・アメリカでは難しい。

 日本のクオリティは良い。それを継続すること。もし、“たまたま”出来ていただけならば、それを必然にすること。“たまたま”出来ていない時間が長かったなら、そのマイナス要因を取り除くこと。コパ・アメリカには、本物の日本で臨んでもらいたい。

初出:サッカー批評 issue50

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