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Jリーグ 11年前

〔日本人、監督論〕城福浩『反骨心』【サッカー批評 issue58】

『ヴァンフォーレ甲府はJ2天下取りを果たせるのか?』
今シーズンのヴァンフォーレ甲府は、これまでのジンクスをモノともしていない。クラブ創設13年目にして、初の開幕戦勝利、初の首位、初の6連勝といった快挙が続いている。批判や低評価をプラスのエネルギーに変換する指揮官・城福浩にチームマネジメントについて伺った。

text by 飯尾篤史 photo by Kenzaburo Matsuoka


城福浩【写真:松岡健三郎】

首位争いができるチームの条件

――J2では約2ヶ月間、首位のチームが翌節に陥落する事態が続きましたが、甲府は悪しき流れを断ち切って首位の座を守っています(取材時8月21日現在)。その要因はどこにあると見ていますか?

「シーズン中なので言えないことも多いんですけど、6月まではいろんなことが起きたのも事実で、あの頃はまだ『このチームとともに歩んでいく』覚悟ができていなかった選手もいたと思います。チームとしても未熟で、ジャッジに苛立って退場者を出したこともあれば、ミスから自滅したこともあった。サッカーと向き合う姿勢に陰りがあると、どうしても結果に波が出るんです。特に今季のJ2は千葉を除いてレベルが拮抗しているので、日々の練習、試合でのパフォーマンスに加えて、サッカーと向き合う姿勢の3つがそろってないと、首位争いはできない。最後には、サッカーに対してすべてを捧げてきたかどうかが成績を左右するんじゃないかと思います」

――千葉はやはり別格ですか。

「シーズン途中にJ1のレギュラーを補強できるわけですからね。そんなこと、これまでなかったし、世界のサッカーシーンを見てもスタメンが下のカテゴリーに移籍するなんて聞いたことがない。それだけ予算があるということじゃないですか」

――好調の要因がサッカーと向き合う姿勢の向上だとしたら、そうした姿勢をどう根付かせてきたんですか?

「ある日急に、というわけではなく、牛歩のごとく積み重ねていくしかないんですね。正直に言えば、負けた試合を見返すのは地獄です。それでも成果と課題を抽出して選手に伝え、選手もそれを受け止めて取り組んでいく。それに尽きます。今、勝点を積み重ねていますが、相手の倍のシュートを放ったかと言ったら、そうじゃない。むしろ勝ちあぐねていた頃のほうが相手を圧倒していた。では、なぜ、勝てているのか。最後の最後で体を張ったり、靴一足分、寄せたりする部分は確実に成長していて、こうした辺りに積み重ねの成果が出ているのかなと。ただ、満足してないですよ。理想は相手を圧倒し、倍のシュートを打って勝つことなので。でも、その過程のなかで進歩してきているのは確かです」

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