〔日本人、監督論〕城福浩『反骨心』【サッカー批評 issue58】

2012年12月14日(Fri)16時19分配信

text by 飯尾篤史 photo Kenzaburo Matsuoka
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言う立場より言われる立場でいたい

――先ほど「代表選手は、新しい監督が来ると『俺を輝かせてくれるんですか?』というスタンスで見る」とおっしゃっていましたが、実際、ある代表選手は「どんな監督もオシムさんと比べてしまう」と話していました。オシムさんのように自分を輝かせてくれるのか、オシムさんのように面白い練習をしてくれるのか、というように。また、これだけ欧州組が増えると、監督よりも選手のほうが欧州の現場の情報を得ていたりするわけです。日本人の、特に若い指導者には受難な時代だと感じます。

「でも、以前の監督や前任者と比べるのは、どの時代でも、どのチームでもあることですよね。それこそ外国籍選手は母国の監督と比べるでしょうし。それに比較対象、つまりスタンダードがオシムさんという非常に高い基準なのは、むしろ良いことだと思いますよ。オシムさんにはオシムさんのすごさがあり、自分には自分のスタイルがある。そこで自分に共感してもらえるかどうかが腕の見せどころ。どうぞ比べてください、というくらいじゃないといけない。それには自分の実力を高めるしかないですよね」

――日本人監督で言えば、城福さんも親しい関塚隆監督がロンドン五輪でベスト4進出を果たし、しかし、韓国に敗れました。この結果はどう感じますか?

「僕の立場では話しにくいんだけど、成功かそうじゃないかと言えば、間違いなく成功だと思います。でも、『もっと違うサッカーができたんじゃないか』『もっと違う選手がいたんじゃないか』と言う人もいるでしょう。『なぜ、あそこまで行けたのか』『なぜ、あそこまでしか行けなかったのか』という論議こそが日本のレベルアップにつながるし、指導者の研鑽にもつながるはずです。あと、もうひとつ言えるのは、僕は言う立場より言われる立場でいたいし、言われる立場のセキがうらやましい。日本で何人もいないわけですから」

――城福さんは昨年、ソウルで韓国の五輪代表の試合を見て、彼らがロンドンでどんな結末を迎えるのか、興味を示されていました。それがまさか日本と戦うことになるとは。

「運命を感じましたよね。日本の選手たちにとって良かったのは、絶対に負けられない韓国と試合ができたこと。兵役免除がどれだけモチベーションになり、逆に重圧になっていたか。そんな状態の韓国と戦えたのは間違いなく財産だし、親善試合を10試合戦うよりも価値のあること。この対戦を糧にしなければならないと思います」

――最後になりますが、城福さんは日本代表監督は日本人であるべきだと思いますか?

「いや、僕はこだわる必要はないと思います。日本のサッカー界を良い方向に導ける指導者であれば、ナニ人でもいい。ただ、日本人指導者ならそこを目指すべきだし、代表監督というのは、プレッシャーに耐えられるかどうか。国民の注目を浴び、批判に晒される。あるいは苦渋のすえ誰かをチームから外す。こうしたプレッシャーに打ち克てるたくましい日本人指導者がたくさん出てくるべきだとも思います」

初出:サッカー批評issue58

プロフィール

城福浩
1961年3月21日生まれ。徳島県出身。徳島県立城北高等学校時代にワールドユース代表候補に選ばれる。早稲田大学卒業後、富士通(現川崎フロンターレ)に入社。日本リーグ2部及びJFLでプレーし、1989年に現役引退。富士通のコーチ、監督を務めた後社業に専念、管理職を経て、東京ガスへ。1999年、JFAナショナルトレセンコーチに就任。2006年、U-16日本代表監督としてU-17アジア選手権で優勝し、2007年のU-17ワールドカップに出場。2008年から2010年までFC東京の監督に就任。2009年ヤマザキナビスコカップ優勝。1年間の充電期間中には、テレビ・ラジオ出演、雑誌・新聞連載、メルマガ執筆、イベント出演など精力的に活動する。2012年からヴァンフォーレ甲府の監督に就任。

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