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酒井高徳、飛躍の原点を語る【ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.27】

text by 元川悦子 photo by Ryota Harada

人一倍練習熱心だった高徳少年

 最後に行うゲームも子どもたちの自由な発想を育てるため、あまりコーチングはしなかった。高徳少年は「小中学校時代にイメージを多く持てたのがよかった」と語っているが、三条SSSのやり方がピッタリ合ったのだろう。一方で、小日向代表は礼儀作法の徹底も大切にした。きちんと挨拶しない子には怒ったりしたが、高徳少年を叱ったことは一度もないという。

「高徳は集合をかけると真っ先に走ってきてよく話を聞いていたし、練習もひとりで黙々とやっていました。試合に行くと、他のチームのプレーを見て真似したりと本当に勉強熱心でした。少年団でサッカーを始めたのが遅かったので、当時はチーム内で2~3番目の選手でしたけど、積極性は誰よりもあった。吸収力と努力のできる子だから、あそこまで大きく成長できたんだと思いますね」

 こう話す小日向代表にとって、高徳少年にまつわる一番の思い出は、卒業間もない6年生の2月に出場したフットサルの東北電力杯の一コマだ。雪の多い三条では冬場は体育館でのフットサルを取り入れている。チームとしても熱心に取り組み、新潟県大会へと進むことができた。

 その1回戦で、三条SSSはGK(ゴレイロ)のミスから黒星を喫してしまう。チームメートからは「何やってるんだ」とGKを非難する声も出た。が、高徳少年は「みんなで戦ったんだからしょうがないじゃないか」とすかさずGKをかばった。「あの優しさは今も忘れられない。彼はみんなの手本だった」と恩師はしみじみ話す。

 わずか2年間の在籍期間だったが、高徳少年はFW、あるいは攻撃的MFとして攻撃を組み立て、リーダーのひとりとしてチーム全体を力強く引っ張った。

「小学校を卒業する頃の僕は身長145センチくらいしかなかったんで、持ち前の速さを活かして裏を抜けてゴールするくらいしかできなかった。何も考えずに必死にボールを追いかけていた感じです。ただ、少年団に入ったことで勝つことの大切さ、負けることの悔しさを学べた。全国大会レベルには程遠かったけど、チームとして戦うことの素晴らしさを知ることができたのは大きかったと思います」

 酒井は10年前の自分を改めて述懐した。


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