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日本サッカーの生きる道―日本が世界一になるための真のポテンシャルを読み解く(後編)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

超えなければならない、いくつかのハードル

 第一に、ボールを失った瞬間からのプレッシング。

 ボールを支配して押し込んでいる時間帯が長いとすると、ボールを失うのはほとんど敵陣になる。そこで、失った瞬間から素早くプレッシャーをかけて、早期にボールを回収する守備が必要になるが、それができないと、カウンターアタックを食らいやすくなってしまう。ポゼッションを主体とする攻撃では、いかに敵のカウンターを阻止するかが重要なポイントだ。

 ところが、Jリーグにはいまだにバルサ型のプレッシングを消化できているチームがない。いったん自陣に引いて、ブロックを形成する守備戦術は浸透しているが、敵陣でボールを奪回する守備はできていない。

 どれだけボールを支配できるか、どこでボールを失うか、マンツーマンの守備ができるか、囲い込みができるか、など正否を左右するポイントがいくつかあるが、どれも要求される水準にないということだと思う。

 第二に、崩す力とフィニッシュ。

 パスワークが持ち味のバルサでも、多くの得点はメッシのドリブルから生まれている。メッシがドリブルで2、3人引きつけられるので、崩しが容易になっているのだ。メッシがいなければ攻撃の威力はかなり削がれるはず。また、フィニッシュの正確性という点でもメッシの存在は大きい。

 メッシのような特殊な選手がいない場合、ボールを支配することはできても、最後の崩しで手間取り、チャンスになっても決定力が低いチームになってしまうかもしれない。そのうえカウンターにもろく、セットプレーで高さがないとなれば、バルサ型のプレースタイルが勝ちに結びつくのかという根本的な疑問も生じてくる。

 バルサは日本だけでなく、すべてのチームにとって手本になる。参考にすべき点は多い。そして、日本はバルサ化に向いている。ただし、バルサと似ているチームになることと、バルサそのものには大きな違いがある。バルサとよく似たサッカーをするけれども、バルサのようには勝てないという事態も十分に起こりうることは知っておくべきかもしれない。

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