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日本サッカーの生きる道―日本が世界一になるための真のポテンシャルを読み解く(後編)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

日本サッカーにはスタイルがない?

 Jリーグの現場にいる人々からも「スタイルがない」という言葉をよく聞く。

 ガンバ大阪の西野朗元監督が、「ガンバのスタイル」という言い方を多用していたように、スタイルを意識していて、すでにそれはあると考えている人もいるが、現状ではまだ少数派なのかもしれない。

 そもそも「スタイル」をどう捉えるかによっても変わってくる。

 スタイルと戦術はイコールではない。チームとしてどうあるべきか。戦術は、それをピッチ上で表現するための1つの手段にすぎない。

 特徴ならすでにある。日本代表が青いジャージを脱ぎ、カメルーン代表の緑や、スウェーデンの黄色を着てプレーしたとして、カメルーンやスウェーデンと間違えられたりはしない。

 Jリーグでもそれぞれのクラブが独自の特徴を持つようになりつつある。やはり、それとわかるプレーをするようになってきた。

 世界の頂点に立つためのプレーという視点では、なでしこジャパンのプレーぶりが日本サッカーのモデルと言っていいだろう。世界一になるための日本のプレーはすでに示されている。

 ただ、スタイルは特徴でも個性でも、勝つための方法論でもない。〝生き方〟だと思う。

 個人の生き方がさまざまなように、チームによってあるべき姿は違う。プロチームの場合は競技成績が死活問題になるわけだが、それもチームによって同じではない。勝ちたいのは一緒でも、優勝を狙うのと残留を目指すのとでは立場が異なる。

 それぞれに与えられた条件の中で、チームとしてどういう〝生き方〟を選択するか。それがどれぐらい表現できていて、受け入れられているのか。Jリーグについていえば〝構築中〟というのが現状だろうか。

日本はW杯で優勝できる?

 少し前までは「優勝できない」ほうが常識の範囲だった気もするが、2回ベスト16を経験したせいか、「優勝」を口にする選手も増えてきた。

 現実的なハードルは高いのだが、以前よりはずっと下がっている。

 サッカーは団体スポーツであり、チームワークが非常に重要な競技だ。体格の大小もさほど問題にならない。日本にとって不利なのは経験値だが、それも大きな差ではなくなりつつある。いますぐ優勝できるとは思わないが、ネガティブな要素もあまりないのだ。

 W杯に関しては出場32ヶ国間の差はかなり詰まっていて、強豪国と弱小国という明確な区分けはもはやなくなった。日本にも優勝のチャンスはある。

 98年にフランスが初優勝したとき、ミッシェル・プラティニは、「W杯で優勝しただけで、世界一になったわけではない」という慎重な言い回しをしていたが、それと同じ意味なら、日本が優勝しても不思議ではない時代にはなってきたかもしれない。

【了】

初出:サッカー批評issue56

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