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吉田麻也が語る「激闘の軌跡」 ~アジアカップで得た収穫と課題~(後編)

text by 中田徹 photo by Kenzaburo Matsuoka

大きな大会で優勝した実感

――大会中にネットが自由に使えるとなると長友選手の「ユベントス移籍かも」というニュースが入ったと思う。「それは飛ばしすぎだろ」と思ったが、実際にインテルに移籍した。

「そういえばユベントスってありましたよね。でもほぼ9割方飛ばしじゃないですか。長友さんとはその話はしませんでした。ただ『時間がない、時間がない。上に行きたい』とは言ってました。本人の中ではチェゼーナから中堅クラブ→ビッグクラブと思ってたんじゃないですか。ところが中堅クラブを飛んじゃったから、本人もびっくりだろうし、僕らからしたら『エーっ!?』ってなるし。でも夢がありますよね。アジアカップをとってビッグクラブへ行くというのは。僕も長友さんのプレーがわかる。だからインテルでどれだけできるか自分にも目安になる――という感じです。チャンピオンズリーグでもがんばって欲しいです」

――アジアカップは冬の移籍市場の時期。それだけに本田選手にとっても期するものがあったはず。その割には仲間を生かすチームプレーが光っていた。

「本田さんはどうしてもタイトルを取りたかったんでしょうね。僕も本田さんもタイトルは初(注:VVV時代、本田は2部リーグで優勝経験あり)なので『優勝ってどんな感じなのかな、どういう気持ちになるのか』『わからんな』って話をしてました。

 優勝した後、閉会式で『MVP誰だよ~』『本田さんじゃないわ』『俺もないけどお前もないでぇ』『それはそうだ』『俺の中でヤットさん(遠藤)だと思っていた』『ヤットさん。でもやっぱり本田さんかも』『優勝、まだ実感がないですね』みたいな話をしていたんですよ。で、本田さんが『お前はええでー。俺より(歳が)2コ下で(アジアチャンピオンを)取ってるからなー』って言うんです。歳が2つ違うのに同じタイミングでタイトルを取りましたから、僕のほうに2年のアドバンテージがある。そこを本田さんはうらやましがってましたね(笑)」

――で、肝心の優勝の実感は?

「うわーってトロフィーを上げて花火がぼんぼん上がって紙ふぶきがぶわーってなったときは最高に気持ちよかったです。去年リハビリに費やした1年のすべてが報われた気持ちになりました。ホント去年はついてないなあと思ったんですけど一気に報われました」

――本当におめでとうございました。

【了】

初出:サッカー批評issue50

プロフィール

吉田麻也
1988年8月24日、長崎県出身。身長187cm /体重81kg。名古屋グランパスエイトU-15、U-18を経てトップチームに昇格。2007年~2009年まで名古屋でプレーし、2010年からオランダのVVVフェンロに移籍。2008年の北京五輪に出場し、A代表デビューは2010年1月アジアカップ最終予選のイエメン戦。2012年のロンドン五輪にはオーバーエイジ枠で6試合に出場し、チームのベスト4進出の大きな力となった。イングランドプレミアリーグ・サウサンプトン所属。

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