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改心を果たした(!?)天才の誓い アントニオ・カッサーノ インタビュー(前編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazuhito Yamada

カッサナータの思い出

――ならば、ここでひとつカッサナータの思い出を記念に語っておこうか。

「ひとつ? そりゃ無理だよ。なんたってそれこそ無数にあるわけで……、たとえばU-21時代、合宿先のホテルにフェラーリで乗りつけて当時の監督(クラウディオ・)ジェンティーレを怒り狂わせた、とか。で、ローマ時代にはバティ(ガブリエル・バティストゥータ)に“こら老いぼれ、もっと走れ”とか言っておちょくったりとか。レアル時代にはカペッロのモノマネで監督を激怒させたりとか……(笑)。

 でもまぁアレだな、最近ので一番面白かったのはやっぱサンプ時代のアレかな。ユースの頃から遅刻の常習犯だった俺は、もちろんあそこサンプでも同じでね。当時の監督はジジ(ルイジ・デルネーリ)だったんだが、ある日の練習にお約束通り遅刻すると、タラタラと歩いてグランドに入って来た俺のとこに監督が近付いて来てね、それで俺に向かってこう言いやがったんだよ。

『アントニオ、規則は規則だから守ってもらわないと示しが付かない。むしろお前はこのチームのリーダーなんだから模範を示すべき立場にある。というわけで、今日の遅刻のペナルティとしてグランド10周を命じる。さぁ今すぐ走れこの野郎!』と……。

 なので俺はジジに『OKミスター、すぐやります!』と言うとね、全速力で走って駐車場に行くとクルマに乗り、そのクルマでグランド10周をやったんだよ! それを見てたストレッチ中のチームメイトたちは全員が大爆笑! その傍らで、監督のジジはと言えば、一人顔を真っ赤にして茹で上がってたという……。アレはマジで面白かったな……(笑)。

 でもまぁ、何度も繰り返しちまうけど、あんなふざけた真似はここミランではできっこないよ。やろうもんならその瞬間にすべてが終わりだからな。もっとも、ここミラネッロのグラウンドにはそもそもクルマは入って来れないしね。唯一人、できるとすればそれは“オバマ”だけ。アイツだけがロッカールームのすぐ側に駐車するのを許されてるからね」

【後編に続く】

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