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【秋春制を考える】原博実技術委員長に聞く日本サッカーの強化ビジョン(後編)

text by 西部謙司 photo by editorial staff

2015年までにスケジュールを整えたい

――なでしこ、U-17、アジアカップと、どの大会でも日本は「バルセロナのようだ」と称賛されています。パスワークのサッカーが日本の方向性になるのですか?

「チームでその時点で使える選手にもよりますけど、最終的には相手に合わせるんじゃなくて、ジャパンズウェイって、技術委員会では言ってるみたいですけど……」

――みたいですけど、って(笑)。

「いや、僕は日本語でいいんじゃないかなって思ってるところもあるもんで(笑)、まあ要は日本らしさですよね。ザッケローニ監督も日本人は器用だと言ってます。わりと外国人の指導者のほうが日本のいいところを見ていて、日本人のほうが海外にかなわない部分を見る。

 ザッケローニ監督はイタリアやヨーロッパに詳しくて、なでしこの佐々木監督は日本しか知らない。けれども、それぞれ結論はだいたい同じなわけです。皆でまとまったプレーをすることですね。例えばアフリカの代表は個々がビッグクラブにいるけれども、バラバラになるときはここまでバラバラになっちゃうのかと思いますよ。日本はそれとは対極な感じですかね」

――日本らしさ、ジャパンズウェイを具体的に言うと?

「まず技術を生かす。フィジカル面で当たると難しいですから、ボールをどんどん動かしながらプレーすること。それから、瞬発力、持久力、組織力も日本人の良さだと思う」

――今後の目標は?

「五輪は予選を通過して、本大会ではグループリーグを突破して、上を狙っていくことですね。フル代表は、なでしこもそうなんですけど、予選がけっこう難しい。まず予選をしっかり突破する。本大会は短期決戦ですからチャンスはあります、前回はベスト16でしたから、ベスト8、4を狙っていく。問題はまず予選です。

 こちらは長期ですから、海外組との連絡を密にしておくこと。同時に、海外の選手だけでなく、国内の選手もいつ招集されてもしっかりプレーできるように準備しておくことが大事です。それにはやはり国内のレベル、Jリーグのコンディションを上げていかなくてはいけないわけです」

――それには、やはりスケジュールですか。少なくとも2015年までには……。

「そうですね。そこが変わらないと、日本のサッカーは変わらない。そのぐらいの覚悟でやっていきますよ。アジアカップで優勝したので忘れられそうになってますけど、実際にあのときは喧々がくがくで大変だったんですから。ああなることはわかっていたけど、結局何もできなかった。それを今度こそ、教訓にしなくてはいけないと思います」

【了】

初出:サッカー批評issue52

プロフィール

原博実
1992年に浦和レッズで現役引退後、同クラブのコーチ、ユース監督を経て、98年に監督に就任。02年からFC東京の監督を務め、04年ナビスコカップでタイトルを獲得。05年に契約期間終了とともに退任するも、再び07年に監督就任。09年にJFA技術委員長、JFA特任理事及び国際マッチメイク委員に就任し、現在に到る。

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