フットボールチャンネル

内田篤人のクロスはなぜ得点を演出できるのか?

text by 河治良幸 photo by Ryota Harada

数種類のクロスを蹴り分けられる内田

 前半35分のフンテラールの得点をアシストしたシーン。シンプルに言えば、内田の正確なクロスにフンテラールがドンピシャのヘッドで合わせた形だが、ドルトムントが攻撃を跳ね返した直後のセカンドボールを活かす形での追加点だった。

 内田のフィードをフンメルスが処理しようとしたところで、ドラクスラーが側面からかっさらい、外を走るファルファンへパス。前に走りながらペルー代表アタッカーはクロスフェイントからシュメルツァーを破りクロス。これはファーで待つバストスに合わず、ピシュチェクがヘッドでクリアしたが、このボールをノイシュテーターが拾った。

 その時、ドルトムントは9人がボールより深い位置に。その手前でノイシュテーターから右で素早くパスを受けたヘーガーは、グロスクロイツを引き付けながら、さらに外を走る内田に前を向かせるパス。

 内田にはグロスクロイツと左サイドバックのシュメルツァーが立ちはだかったが、内田は中央で待ち構えるフンテラールの動きに合わせ、右足のインサイドで押し出す様にストレートのクロスを、2人の壁の合間に通す。

 ゴール前のフンテラールはバックステップでスポティッチの背後に回ったが、セルビア人CBは目測を誤ったのか、伸びるボールに対して体が被ってしまう。フンテラールはジャストの位置、ジャストのタイミングで合わせる形でゴールネットを揺らした。状況に応じて数種類のクロスを蹴り分ける内田の持ち味を良く理解している、フンテラールならではのフィニッシュだ。

 またファルファンが一度仕掛け、攻撃を跳ね返されても、さらにつないで内田がクロスに持ち込むという、厚みのある攻撃が実ったが、右サイドのコンビが個々でも流れの中で能力を発揮できることを改めて印象付けると同時に、チームとして彼らの特徴の活かし方を共有していることが分かるゴールだった。

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top