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編集日記 11年前

遠藤保仁のゲームメイク術を読み解く【川口昌寿 週刊パワープレー】

text by 川口昌寿 photo by Kenzaburo Matsuoka

小学生のときには相手の監督も見えていた

「どうしてかなー、説明するのは難しいですねえ」

 トレーニングを控えて練習着姿の遠藤保仁は、ソファに座り直しながら少し考え込むしぐさを見せた。考え込むといっても、眉間にしわを寄せるようなタイプではない。本当に考えているのかどうか怪しいぐらいの、いつものとおり、飄々と風に吹かれているような顔つきである。少し整理したほうがいいと思って、質問を刻むことにした。

「いつごろからですか?」

「中学生ぐらいからですかね、固まってきたのは高校あたりですけど」

 一瞬で状況を読みとる。これはサッカー選手としての彼の特技といっていい。ピッチ上の敵味方を全員見るようにしているという。誰がどこにいるのかを言えるように。それどころか、小学生のときには相手チームの監督まで見ていたそうだ。相手チームの監督がベンチで何か言っていた。「何か騒いでいるな」と。普通なら、それで終わりである。ところが、遠藤少年は監督の指示内容を聞きながらプレーした。それで、相手チームが何か修正してくるかもしれない。だったら、先手を打っておこうと。

「ずっと言われていたんですよ、頭を使ってプレーしなさいって」

 頭を使って賢くプレーするためには、まず周囲を見ておこうと考えた。

「まず首を振ることかなと。GKの位置とかも含めて、全部の選手がどこにいるか言えるぐらいに見ようと思ったんです。あの、公園のあっちのほうでブランコが揺れているとして、視界に入ってても言えない人が多いと思うんですよ。右から二番目が揺れてますよ、というところまでは。なので、それも言えるように反復練習するようになった。普段の生活から、視界に入るものは自分の中で整理できるように。それがやれるようになってきたのが中学生の終わりぐらいですかね」

 それから積み重ねて今日に至っている。調子のいいときは、誰がどこにいるのかは予測でわかるそうだ。

「すべての選手を見るのは難しいんですけど、調子がいいときは“ここにいるだろうな”というところまでドンピシャでわかります。そういうときはプレーが楽ですね。遠くのほうをしっかり見て、近くは残像で見る感じですかね。近いほうは自然に目に入ってきますから」

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