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故意のファウルから見えた、長谷部がサイドバックで起用される理由

text by 河治良幸 photo by Ryota Harada

故意のファウルでイエローをもらった長谷部

 この試合で地味ながら大きなポイントとなったのが後半39分、この日は右サイドバックで起用されていた長谷部が相手選手へのタックルで警告を受けた場面だ。“フェアプレー”を奨励するサッカー界においてファウルをポジティブに取り上げることは賛否両論があるだろう。が時として、警告覚悟のファウルがチームの危機を救うこともある。この場面での長谷部のファウルはまさしくそれだった。

 そのきっかけとなったのがニュルンベルクの危険なカウンターだった。ボルフスブルクはワイドに開いた左ボランチのドストから、右前方のジエゴに大きなサイドチェンジのパスが出たが、その手前に体を入れた左サイドバックのピノラにヘディングでクリアされてしまう。

 セカンドボールを左ウィングから後ろに引いてきたエスヴァインが、素早い攻守の切り替えで追走する長谷部よりも先にボールを触り、サイドを駆け上がるピノラに1タッチパス。長谷部を引き付けたピノラからリターンを受けたエスヴァインは一気に縦へ持ち上がり、内側から迫るメドイエビッチを振り切る。

 この時点でボルフスブルクの中盤は完全に崩れた状態。センターバックの1人であるナウドが前に出てボールホルダーの進行を止めることを決断したが、エスヴァインはその動きをあざ笑う様に裏で待つペクハルトにパスを出した。

 ナウドが前に出てギャップになった場所でボールを受けて前を向きくイメージはペクハルトにあったはず。しかし、外側から寄せてくる選手がいた。長谷部だ。エスヴァインが縦にドリブルを開始した時点ではエスヴァインとサイドのピノラを同時に見る状態にあったが、中央が危険になると判断し、ピノラを捨てて中に絞ってきていた。

 その動きを察知したペクハルトは右足のアウトでトラップし、外側に切り返そうとした。戻りながら中に絞ってきた長谷部は完全に逆を取られたが、咄嗟に右足でペクハルトを引っかけて倒したのだ。明らかに故意のファウルであり、キンヘファー主審は躊躇なくイエローカードを提示した。

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