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日本代表 11年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その4・南アW杯ベスト16とその先)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

W杯で持ち味を出した選手、出せなかった選手

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本田のキープ力に頼っていた【写真:山田一仁】

 W杯での日本は守るためだけに守っていて、攻めるための守りにはなっていない。奪ったボールを相手陣内へ運ばないかぎり得点はとれないのだが、運ぶ手段がロングボールとドリブルに限定されていた。守備時にボールより前方にいるのは多くの時間で本田だけなので、自陣でボールを奪った後は本田へロングボールを蹴るしかなかった。

 本田のキープ力がないと後方の押し上げができない。あとは、松井と大久保がドリブルで運ぶ形。パスの出しどころが前方にないので、1人で運んでいくしかない。松井、大久保は決然とドリブルしてファウルを誘った。

 この日本代表には、バルセロナでいうところの「4番」がいない。センターサークルでボールを中継して確実にビルドアップする役割がなかった。位置的にそこにいる阿部は、守備時に左右に振られ、ディフェンスラインに吸収されるなど守備の負担が大きく、それを期待されてもいたから、攻撃時に中央で中継点になる余裕などなかった。

 本来はゲームを作る能力が高い遠藤や長谷部も、やはり守備に引っ張られていてポジションをキープできていなかった。そもそも、そこでビルドアップを安定させようという発想でチームを作っていないので、つなげるはずがないのである。たまたま遠藤、長谷部がいい形でボールを持てた場合のみ、パスワークで前方へボールを運ぶことができるだけで、大半は守備に忙殺されていた。

 W杯では“らしい”プレーをした選手と、できなかった選手がいる。

 GK川島は素晴らしいプレーを連発して力を発揮した。DFでは中澤、闘莉王が冷静な守備と空中戦の強さを示している。このコンビは日本代表史上でも最高レベルといえる。ただし、当初のコンセプトだったら弱点を露呈していたかもしれない。W杯では引いた状況で守っていたので、カウンターを食らってスピード勝負になる場面が少なかった。

 背後にスペースのない状況ならば中澤、闘莉王は強力で、W杯では彼らの長所が発揮されていた。長友と駒野も守備面で対人能力を示し、味方の援護も早かったので2対1でボールを奪うことができていた。攻撃に出る回数は少なかったが、2人の長所はむしろ守備面なのでこちらも持ち味は出たほうである。

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