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日本代表 11年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その4・南アW杯ベスト16とその先)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

体格とパワーで勝負できるフォワードが必要になる

 カウンター戦法は必ずしも弱者の選択ではない。カウンターサッカーの権威であるイタリアは、それで4回も世界チャンピオンになっている。弱いから守らされているのではなく、わざと相手にボールを持たせているだけだ。

 強固な守備で相手の攻撃をシャットアウトし、決定的な高精度のパスを出せるMFと、1人でもフィニッシュへ持って行ける強力なストライカーの組み合わせで点をとる。攻撃のためのスペースを確保する、そのために守っている。パラグアイやウルグアイもイタリア型といっていいだろう。

 しかし、日本の場合、おそらくスペースがあっても点はとれない。スペースを利用した攻撃は相手との競り合いになることが多い。FWによほどスピードがあれば別だが、相手DFとのフィジカルコンタクトは避けられない。

 そうなると体格とパワーで勝負できるFWが必要だが、日本にはそのタイプのFWが非常に少ないのだ。南アフリカW杯の日本代表モデルの理想がイタリアだとするなら、昔のように釜本邦茂の再来を待ち続けることになる。釜本や久保竜彦は、これまで10年に1人ぐらいしか出てきていない。

 守備時のプレッシングエリアを前方に移し、高い位置でのボール奪取からのショートカウンターという流れならば、イタリア型でも可能性はある。

 その場合は、瞬間的に裏をとれるようなアタッカーと、その機を逃さずに精度の高いパスを出せる選手がいれば、フィジカルコンタクトなしでフィニッシュできる。W杯後に日本で行われたキリンカップ・パラグアイ戦での香川真司のゴールがこの形に近かった。

 日本の自陣からのビルドアップから得点につながっているが、崩しの形そのものは香川の飛び出しと中村憲剛のスルーパスが合ったもの。香川はフィジカルコンタクトなしに一瞬でGKと1対1になっていた。もちろん、高い位置で守備をするにはスピードのあるセンターバックが条件になるが、そこが解決できればできないサッカーではないと思う。

 ただ、ここで冒頭の疑問に戻るのだが、どういうサッカーをすれば勝てるのかだけでなく、そもそもどんなサッカーがやりたいのか、これもかなり重要だと思うのだ。

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