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日本代表 11年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その4・南アW杯ベスト16とその先)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

あのサッカーを、日本人は続けられるのか

 南アフリカW杯のチームが今後のモデルになりにくい理由の1つは、次の目標がベスト8になるからだ。

 今回は相手がパラグアイで、どちらも得点がとれずにPK戦での決着だったが、この段階で当たる相手は毎回パラグアイではない。ブラジル、オランダ、ドイツ、スペインのクラスと当たるかもしれないのだ。日本の攻撃力、得点力が足りなかったのは明らかだったのだから、そこを改善していくのが強化につながるのだが、それを南アフリカのチームを土台に作るのはかなり難しい。

 まず、単独でボールを運ぶだけでなく、ゴールできるFWが必要になってくる。ただし、日本の決定力は非常に高かった。1試合で2本のFKが立て続けに決まる例は珍しい。枠内シュートの率はいつになく高く、あれ以上シュートの精度を要求するのは無理だと思う。日本の決定力は十分に高かった。そうすると、得点を増やすにはシュートの数を増やし、チャンスの数を増やすしかないのだが、ボールを運べないチームでどうやってそれを実現できるのか。

 結局、ボールを運ぶためのチームに再編成する必要が出てくる。つまり、W杯のときの戦法を発想の根本から変えなければならないので、ベスト16のチームはモデルにはなりにくいのだ。

 南アフリカでベスト16の日本代表は、3週間の突貫工事で組み直したにしては完成度の高いチームだったといえる。だが、あれ以上の伸びしろもあまり期待できそうもない。

 南アフリカW杯のチームがモデルになりにくい理由は、あのままではベスト8に進むのが困難だという理由だけではない。

 あのサッカーを日本人が続けられるのか、という疑問があるからだ。

 ボールを持たないサッカー、守り続けるサッカーで満足できるのか。モチベーションを維持できるのか。イタリア人はそれを続けてきた。パラグアイやウルグアイも長年そうしてきた。彼らはそれなりに攻撃もしていて、攻撃するための守備も手の内に入っているから、ただ守るために守っているサッカーではない。守備的なのは確かだが。

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