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Jリーグ 11年前

長時間移動、圧倒的なアウェイサポ……。過酷な遠征に耐えたベガルタ仙台が執念のドロー

text by 長沢正博 photo by Masahiro Nagasawa

大歓声の中、劣勢を強いられる仙台

 試合自体はブリーラムのペースだったと言っていい。2011年に建設された2万4千人収容の近代的なサッカー専用スタジアム、通称“サンダーキャッスル”に詰めかけた約1万9千人のホームの大歓声に後押しされて、ブリーラムの選手たちは豊富な運動量で前半から攻守に積極的な動きを見せる。

 仙台の選手がボールを持てば、バックスタンドを中心に激しいブブゼラの音が選手たちに浴びせられた。ちなみにコールリーダーを務めているのは、地元の有力政治家でもあるチームのオーナーの夫人だ。手倉森監督は「柏のネルシーニョ監督が“ものすごくパワーがあるスタジアムだ”と話していたが、聞いていた通りだった」と振り返る。

 どちらも勝てば他会場の結果次第で決勝トーナメント進出が決まる可能性があった。特にブリーラムは最終戦にアウェイでのFCソウルとの試合が控えている。チームで初となるACLのグループステージ突破を果たすためにも、是が非でもこの試合で勝利を収めたいところだった。

 疲労を考慮して梁や鎌田、富田、菅井といった一部主力を日本に残してきた仙台は、相手の厳しいチェックもあって、ボールを持っても攻撃のテンポが上がらない。そして水を十分含んだピッチは滑りやすく、両チームのプレーは徐々に激しくなる。

 前半、粘り強い守備でブリーラムの攻撃をしのいでいた仙台だが、後半8分、タイ代表の2番テーラトンのFKから5番のオスマルが合わせて、ついに先制点を奪われる。待望の得点に会場の雰囲気は一段とヒートアップ。ブリーラムの選手がファウルで倒されれば、サポーターたちは立ち上がって声を上げ始める。

 仙台は佐々木や中原を投入した後もなかなか攻撃のスピードが上がらず、逆に決定的なピンチを幾度も迎えた。それでも、なんとか追加点を許さずにいると、ロスタイムに渡辺がGKとセンタリングを競ったこぼれ球が中原の目の前に落ち、奇跡的な同点弾が生まれた。

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