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勇敢さが仇となったドルトムント。勝機ある中で決勝点を許したのはなぜか?【CL決勝徹底分析】

text by 河治良幸 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

難しかった選手交代のタイミング

 しかし、諸刃の剣というべきか。疲労も出てくる時間帯で長い距離を何度も往復すれば、運動量や寄せのスピードも落ちてくる。お互いにとってそうであるはずだが、そうした展開が続いたことは、「ボール支配率」が58%のバイエルンにとってアドバンテージとなった。

 何より相手のキーマンであるロッベンとリベリーのマークが緩くなったことが、失点の大きな要因となった。振り返ればクロップ監督としては、ここでベテランのMFケールを投入して中盤を再び引き締める策も有効だったかもしれないが、ハイテンションな状態が続き、延長戦も視野に入れる中で、バイエルンの先手を取って動くのは難しかったのだろう。

 一度はリードされたところから、下を向くことなく攻勢をかけて同点に持ち込み、あわや逆転を狙えるところまで行ったドルトムントの戦いぶりは立派だった。しかし、やはり本来のスタイルは組織的なプレスと鋭いショートカウンターを武器とする堅守速攻であり、それがはまっている時間帯が長いほど、ドルトムントの勝機は増えたはず。

 だが、基本スタイルを打ち出しながらも、序盤から勇敢に高い位置での勝負に出た以上、接戦となれば90分、あるいは120分のどこかで自分たちのサッカーができなくなることをクロップ監督も想定していたはず。

「異なる戦い方をした方が良かったかもしれないが、我々が勝つかもしれないと思わせる時間帯もあった」と語る指揮官にとって、大一番に敗れた悔しさと共に、最強のライバルを相手に“勝ち負け”に持ち込んだある種の満足感もあるのではないか。

【了】

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