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メッシは是か非か? 世界一の選手が告発された脱税容疑事件。現地記者がその手口と背景を解説

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

裁判所での陳述は避けられない

 正直ここまでくると、個人的にはなんだか茶番に見えてくる。

 現政府の元官僚が4900万ユーロ(約63億円)以上を着服、脱税し、スペイン国外のタックスヘブンに数々の銀行口座を所有していることが明らかになっている状況で、身内の横領は裁くことができない政府がメッシは裁いてやると息巻いても、説得力に欠けると感じるのは私一人ではないだろう。

 さて、気になる現況だが、7月5日にメッシサイドと税務署サイドの交渉がスタートしたところだ。法律では起訴されてから2か月以内に罪を認め、支払いに応じる場合、減刑、減額になるため、メッシサイドは裁判を避けるべく、過ちを認めて減刑を求める方向で動いている。

 刑務所行きという最悪なケースはもちろん免れるが、支払の減額といっても、現状では脱税分400万ユーロにペナルティとして更に400万ユーロ、更に税金として約100万ユーロかかり、合計で900万ユーロ以上を支払う計算になるため、そこからの減額であれば、大きな期待はできないかもしれない。

 ただ、メッシ的には、多額の広告収入を得ていることもあり、これ以上のイメージダウンを避けるのが最優先事項となる。

 もっとも、刑務所行き等は避けられても、裁判長を前にしてのメッシの陳述は避けられない見通しだ。結局は金銭問題に終始するため、最終的には両者が経済的合意に達してこの事件も終焉を迎えるだろうが、一部では、今回のメッシの起訴は、スポーツ選手はもとより、有名人を含む社会全般に喚起を促すための見せしめの意味合いもあるのではないかと見られている。

【了】

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