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連載コラム 11年前

W杯前に知るべきブラジル・フッチボール。富裕層に好まれるクラブ、貧困層に愛されるクラブ

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Kenta Tazaki , Sachiyuki Nishiyuki

サントスに強い影響を受けたカズ親父

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父・納谷の憧れだったサントスに加入したカズ【写真:Sachiyuki Nishiyuki】

 そして、ブラジルのクラブを紹介する際、外せないのが知良もプレーしたサントスFCである。

 サンパウロ州の海沿い、サントスは開放的な空気の流れる港町である。1912年創立のこのクラブはペレと共に世界中にその名を知られることになった。クラブワールドカップの前身、南米と欧州のチャンピオンが対戦するワールドクラブ選手権で62年にポルトガルのベンフィカを、63年にイタリアのACミランを破って優勝している。

 知良の父親――キングファーザー、納谷宣雄にとってサントスは特別なクラブである。納谷がブラジルに惹きつけられるようになったのは、70年にメキシコで行われたワールドカップへ足を運び、ペレのプレーを見てからのことだ。

 85年5月の『キリンカップ』では代理人としてサントスを日本遠征に連れて行ったこともある。このサントスとの関係が知良の人生を大きく動かすことになった。

 この試合の半年ほど後、キンゼ・ジャウーの下部組織にいた知良はサントスに移籍、翌年86年2月にプロ契約を結んだのだ。父親の代理人としての影響力がそこにあったことは容易に想像できる。

 納谷のサントスに対する思い入れは、後に彼が立ち上げたクラブ、静岡FCのユニフォームを白と黒にしたことにも現れている。

「サントスと同じだよ」

 とユニフォームを嬉しそうに見せてくれた顔を今も覚えている。残念ながら、静岡FCは地域リーグから昇格することが出来ず、2010年1月に藤枝MYFCと統合することになった。実質的には藤枝による吸収合併だった。

【了】

『ザ・キングファーザー』
定価1,680円(税込)

田崎健太:著
誰も知らない、誰も描けなかった
三浦知良の父、納谷宣雄の半生

カズを誰よりも愛し、
カズをキングにした男の
濃厚過ぎる半生を描いたノンフィクション。

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