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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その2)

text by 編集部

帰化選手に最も積極的なのはカタール

――国民性も背景にあるんですね。

「自国だけでは、人材を補えないことがはっきりわかっているんですね。自国民で組織論を勉強している人はカタール人だけで会社などをやらせたら崩壊するとわかっています。だから、2022年のW杯の招致レースも全部ブレインがヨーロッパのマーケティングをやっているディプロマティック(外交)のプロを呼んだり、会社ごと呼んだりとか、やっていたわけです。

 記者会見では白装束の人がサインや握手をするために出てきますが、彼らは方向性を何も決めていないですから。どのタイミングでどこでロビー活動をするとか、どのタイミングでコンタクトを取るとか、それこそ全部を任せていますよ」

――湾岸諸国には海外サッカー選手も多くて、帰化を希望する人も多いんですか?

「基本的に協会が帰化を持ちかけるので、選手が希望してもなかなかなれませんね。政府の問題ですので。サッカー協会は政府の一団体で、サッカークラブもみんな王族がやっていますからね。ただ同じ湾岸諸国のなかでも帰化に関しては180度意見が異なります。一番積極的なのはカタールでナイジェリア人の帰化やアイウトンの例など、ルールを逆手に取りながら進めていました。アイウトンについては当時のルール上で問題は何もなかったんですけど、FIFAが怒った。ブンデスリーガ得点王で一回もカタールに住んだことのない縁もゆかりもない選手でしたから」

――カタールはいまもそういった帰化を続けているんですか?

「南米の選手たちを中心にしたアイウトンやセバスチャンといった路線から、さすがに関係ない選手を呼んできた時代から方針が変わりました」

――セバスチャンって言うと、一生懸命プレーする印象が伝わってきますよね。

「そりゃ何億円ってお金が動いていますから」

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