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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その2)

text by 編集部

セバスチャンの帰化には5億円以上のお金が動いた

――選手を買う金額はいくらなのでしょうか?

「たぶん5億円か6億円ぐらいだと思いますよ。帰化申請料として選手に払って、代表戦でもボーナスが出ますよね。勝利給以外に優勝とかで、5倍か6倍は他の選手よりも高くなると思いますよ。彼の場合は06年のアジアカップで優勝して金メダルを獲得しています。しかも、地元カタールのドーハで。それこそ07年のガルフカップも優勝しました。これでもうカタールは元は取りましたよ。このふたつは絶対に取らなくちゃいけなかったでしょうからね。さらに特別ボーナスももらってセバスチャンもウハウハですよ」

――5億円という金額は大きいですね。

「大きいですよ。90年代にナイジェリア人でカタールに帰化した選手に会った時、彼は36歳になってもプレーしていましたね。カタール人の選手も大していませんし、もともとアフリカ人としての強靭なボディがありますので、未だにプレーができていました。毎年カタールで1億円くらいもらっていて、紛争をやっているナイジェリアに帰らなくて済むので彼はすごく感謝していましたよ。『カタール人になれて良かった』と。

 当時、一部の人は彼を批判していましたけど、彼自身は帰化で上手くチャンスをものにしました。極端な話ですが、彼からすれば逆に失敗して追い返されても1億4千万人がいて紛争をやっている地域に戻る怖さはあるでしょうが、金銭的にはマイナスはないんですよ」

――FIFAルールで5年在住しなければ帰化できないので、これからはこういったケースは難しいのかもしれませんね。

「カタールもそれに合わせて準備を進めていますよ。12歳ぐらいから南米とかから連れてきていますから。ユース世代の選手で17歳以下の国際移籍は家族同伴じゃないとダメですが、家族ごと連れて来るんです」

――多額のお金で雇ってくるのでしょうか?

「セバスチャンのような帰化申請料ではないですよ。ただカタールだと年間300万円ぐらいで暮らしていけますから。それも南米の貧しい家庭の子供から選んで連れてきています。カタール人からすれば、それくらいの生活費は安いものですよ」

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