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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その2)

text by 編集部

湾岸諸国のサッカーレベルが上がらない理由とは?

――育ててもらえて、家族の生活もずっと約束されているのでしょうか?

「10年後はどうなるかわかりませんけどね。ただ来れば何かしらの可能性はありますからね。賢い人だったら何年か住んで上手く王族と仲良くなって、コネ作ってビジネスができるかもしれません。ビザなんかも保証されるわけですから、ブラジルのスラム街に留まっているよりもチャンスは広がりますよね。

 それにカタールにはJヴィレッジ並みの施設もあって、育成選手もアスパイアアカデミーというチームに集めています。頻繁に海外遠征をしていて、よりサッカーに専念できる環境があります。2022年W杯開催に向けて、アスパイアアカデミーには予算という概念がないので良いものにはガンガンお金を使っていますね。それにカタールは人材がいないので淘汰されることも少ないですし、折角連れてきた選手は大切にしています。

 僕もいろいろと見てきましたが、監督はすぐに変えてもアシスタントコーチやゴールキーパーコーチなんかはずっと同じ人をつけていますね。最低限のことは彼らもやっていますよ。チームのフロントも同じような人でやっています。切ってばかりだと誰もいなくなりますから。

 逆にカタールはぬるま湯の環境なんですよ。選手が増えれば、もう補充しなくていいですからね。ブラジルだったら才能ある若手がどんどん出てきて競争が生まれますよね。カタールの場合はなんとか外から連れてきて、プラスか現状維持をしています。これが湾岸諸国のレベルが上がってこない理由ですよ。

 大会メンバーが23人でも、25か26人ぐらいしか候補がいません。日本だとMLSカップで優勝した木村光佑選手だったり、ヴィッセル神戸ユースの岩波拓也選手がPSVからオファーを受けたり、いろいろいますよね。湾岸諸国は外国人の帰化を含めてなんとか23人を保っている状態なので人材がいません。だから帰化に関して言えば、彼らなりにがんばった結果ですね」

【その3へ続く】

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