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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。ジーコに影響を与えた名将テレ・サンターナ

ジーコへの影響

 2002年W杯後、ジーコが日本代表に就任した際、目標とする監督としてテレ・サンターナの名前を挙げた。ジーコの指導方針はテレ・サンターナのそれとかなり重なる。

 ジーコはテレ・サンターナを愛情ある完璧主義者だったと表現する。

 一つのプレーを10回練習させた時、9回成功したとしても、一度失敗すれば、再び同じ練習をやらせたという。

「特に伸びしろがあると彼が考えた選手には厳しかった。そして、自分を磨こうという姿勢のある選手に対しては、付ききりで指導したものだった」

 テレ・サンターナは96年に脳梗塞を患い、監督を辞任した。その後、パルメイラスの非常勤顧問に就任したが、サッカーの表舞台からは姿を消した。ぼくは彼に話を聞きたいと思い、何度か連絡をとった。しかし、日程が合わなかった。

 2005年、ようやく約束をとりつけたが、取材日数日前、彼の息子から連絡があった。テレ・サンターナが突然、友人の船に乗ると言って、カリブ海に出かけてしまったという。

「父は糖尿病で足を切断してから精神的に不安定になっている。それ以降、約束をしばしば破ることがあるんだ」と申し訳なさそうに言った。翌2006年3月にも連絡を入れたが、今度はとても取材に応じられる体調ではないと断られた。

 彼が亡くなったのはその翌月、4月21日のことだった。いつか話を聞きたいというのは、今となっては叶わない夢になってしまった。

【次週へ続く】

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